産業廃棄物処理業界が抱える労働災害(労災)リスク
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【産業廃棄物委託契約書とは】5つの基準と記入内容・添付書面を確認
事業活動から生じる産業廃棄物は、排出事業者が最後まで適切に処理する責任を負います。
排出事業者は、産業廃棄物の処理を廃棄物処理業者へ委託するケースがほとんどでしょう。
産業廃棄物の処理を委託する際は、産業廃棄物処理委託契約書の締結が求められます。
そこで本記事では、産業廃棄物処理委託契約書の締結の基準や記入項目、注意点などを解説します。
これから産業廃棄物を処理する予定の排出事業者の方、排出事業者と委託契約書を締結する処理業者の方は、ぜひ参考にしてください。
< 目次 >
産業廃棄物処理委託契約書とは
産業廃棄物処理委託契約書とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を業者に委託する際に交わす文書のことです。
排出事業者は、産業廃棄物を適切に処理する義務がありますが、都道府県・政令市に許可を得た業者に処理業務を委託できます。
ただし、業者が許可を得ている事業範囲外の産業廃棄物の処理を委託した場合、無許可委託となるため注意しなくてはなりません。
また、産業廃棄物処理委託契約書を締結しなかったり、委託基準に違反した場合、排出事業者は300万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役、又はその両方が科されます。
5つの基準
産業廃棄物処理委託契約書の締結にあたっては、主に5つの基準があります。
二者契約
産業廃棄物処理委託契約は、二者間で締結するのが原則です。
ただし、契約が二者間であることと、契約書が二者間で交わされることとは必ずしも一致しません。
契約書を二者間で締結する必要がある、ということは廃棄物処理法上明記されていませんが、
排出事業者は、収集運搬業者・中間処理業者・最終処分業者など、委託するそれぞれの業者と個別に契約書を交わすことが望ましいとされています。
委託する際には、委託先業者の処分能力や事業範囲を確認してから契約を結ぶ必要があります。
書面での契約
産業廃棄物の処理委託契約は、必ず書面で交わします。
口頭での契約は言った・言わないのトラブルになる可能性が高く、推奨されません。
法定記載事項に変更が生じた際も、覚書を締結します。
最近では、電子契約で交わすケースも増えています。
必要な項目を記入する
産業廃棄物処理委託契約書には、廃棄物処理法の施行令および施行規則で定められた必要事項を記入しなくてはなりません。
記入すべき全11項目は、後ほど詳しく紹介します。
契約書に許可証等の写しを添える
産業廃棄物処理委託契約書には、許可証や認定証などの写しを添えなくてはなりません。
委託先業者の許可証には有効期限があり、期限が切れていると無許可扱いになります。
また、産業廃棄物処理委託契約書・許可証それぞれの内容が一致しないと、委託基準違反となる恐れがあります。
有効かつ適切な書面を用意し、添付漏れがないよう注意しましょう。
5年間保存
排出事業者は契約が終了した後も5年間、産業廃棄物処理委託契約書や添えられた書面を保管しなくてはなりません。
紛失しないよう適切な保管体制を構築することが不可欠です。
添付すべき書面
産業廃棄物処理委託契約書は主に「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」の2種類があります。
それぞれに添える書面を見ていきましょう。
収集運搬委託契約書・処分委託契約書に添付する書面
収集運搬委託契約書・処分委託契約書のどちらにも添えなくてはならない書面は以下の通りです。
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- ▽収集運搬委託契約書・処分委託契約書に添える書面
- ・再生利用に係わる環境大臣の認定証の写し
- ・広域的処理に係わる環境大臣の認定証の写し
- ・無害化処理に係わる環境大臣の認定証の写し
収集運搬委託契約書にのみ添付する書面
収集運搬委託契約書には、以下の書面も加えて添えます。
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- ▽収集運搬委託契約書に添える書面
- ・産業廃棄物収集運搬業の許可証の写し
- ・他者の産業廃棄物の運搬を業として行える者であり、委託予定の産業廃棄物の運搬が、その事業範囲内であることを証明する書面
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処分委託契約書にのみ添付する書面
処分委託契約書には、以下の書面も加えて添えなくてはなりません。
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- ▽処分委託契約書に添える書面
- ・産業廃棄物処分業の許可証の写し
- ・他者の産業廃棄物の処分を業として行える者であり、委託予定の産業廃棄物の処分が、その事業範囲内であることを証明する書面
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記入項目
ここでは、収集運搬委託契約書・処分委託契約書のそれぞれに記入しなくてはならない項目を見ていきましょう。
収集運搬委託契約書・処分委託契約書に記入すべき項目
収集運搬委託契約書・処分委託契約書のどちらにも以下の全8項目を記入しなくてはなりません。
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- ▽収集運搬委託契約書・処分委託契約書に記入すべき項目
- 1.委託する産業廃棄物の種類および数量
- 2.委託契約の有効期間
- 3.委託者が受託者に支払う料金
- 4.受託者が許可を受けた事業範囲
- 5.委託する産業廃棄物の適正な処理のために必要な情報
- 6.委託契約の有効期間中に5.の情報に変更が生じた際の伝達方法に係わる事項
- 7.委託業務終了時の委託者への報告に係わる事項
- 8.契約解除時の未処理産業廃棄物の取り扱いに係わる事項
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また、5. 委託する産業廃棄物の適正処理のために必要な情報とは、以下の事項を指します。
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- ▽委託する産業廃棄物の適正処理のために必要な情報
- ・産業廃棄物の性状および荷姿
- ・通常の保管状況下での腐敗、揮発等性状の変化に係わる事項
- ・他の廃棄物の混合等により生ずる支障に係わる事項
- ・日本工業規格C0950号に規定する含有マークの表示に係わる事項
- ・委託する産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨
- ・その他、取り扱いに係わる注意事項
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収集運搬委託契約書にのみ記入すべき項目
収集運搬委託契約書には、以下の項目も記入しなくてはなりません。
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- ▽収集運搬委託契約書に記入すべき項目
- 運搬の最終目的地の所在地
- 積替保管する際は、積替保管場所の所在地・産業廃棄物の種類・積替保管上限に係わる事項
- 安定型産業廃棄物5品目の積替保管を行う際は、積替保管場所で他の廃棄物と混合することの許否等に係わる事項
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処分委託契約書にのみ記入すべき項目
処分委託契約書には、加えて以下の項目も記入します。
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- ▽処分委託契約書に記入すべき項目
- ・処分又は再生場所の所在地・処分又は再生方法・施設の処理能力
- ・最終処分場所の所在地・処分方法・施設の処理能力(中間処理を委託する場合)
- ・輸入廃棄物の場合は、その旨
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産業廃棄物処理委託契約書を締結する際の注意点
最後に、産業廃棄物処理委託契約書を締結する際の注意点を見ていきましょう。
再委託の禁止
再委託とは、委託先業者が引き受けた産業廃棄物の処理を、他の者に再び委託することです。
処理責任の所在が不透明になる上、不法投棄などの不正処理を招く恐れがあるため、再委託は認められません。
ただし、法定の再委託基準を満たす場合や受託業者が改善命令・措置命令を受けた場合のみ、再委託が認められます。
三者間契約の禁止
排出事業者・収集運搬業者・処分業者の三者間契約は原則認められません。
ただし、収集運搬業・処分業のどちらも許可を受けた業者に依頼する場合は、産業廃棄物処理委託契約書を一つに統合しても問題ありません。
産業廃棄物の処理責任
産業廃棄物はたとえ量が少なかったとしても、最後まで適切な方法で処理されなくてはなりません。
特に、特別管理産業廃棄物の扱いには、細心の注意が求められます。
産業廃棄物は排出した事業者が、自ら責任をもって処理しなくてはなりません。
産業廃棄物の処理の多くは、排出事業者から処理業者へ委託されます。
ただし、処理を委託するケースであっても、最終的な処理責任は委託する排出事業者にあることに変わりありません。
排出事業者は産業廃棄物の運搬・処分の委託先で、最後まで正しい処理がなされているかを把握し、必要に応じた措置を講じる必要があります。
排出事業者が産業廃棄物を適切に扱わないと、行政指導や処分・刑事罰の対象となるため、ルールを理解した上での正しい行動が欠かせません。
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いかがでしたでしょうか。
今回は産業廃棄物処理委託契約書の締結にあたって5つの基準と添付書面・記入内容などについて解説しました。
産業廃棄物処理委託契約書を締結しなかったり、基準を守らなかったりすると、重大な違反として罰則が科されます。
産業廃棄物の収集運搬・処分を委託する際は、注意点や委託基準を確認してから、産業廃棄物処理委託契約書を忘れずに交わしましょう。
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