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コラム
産業廃棄物処理におけるCO2排出量の算定・管理方法
産業廃棄物業界でも脱炭素に向けた取り組みが注目を集めています。
CO2排出量を気にしている事業者は多いでしょう。
本記事では、脱炭素が注目を集めている理由と産業廃棄物業界におけるCO2排出量の現状などを解説するとともに、CO2排出量の計算方法や管理方法などを紹介しています。
脱炭素経営は事業者にとってもメリットのある取り組みです。CO2削減に向けた取り組みを検討している方は参考にしてください。
< 目次 >
社会的に脱炭素が注目されている背景
脱炭素が注目を集めている背景として、政府が「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言したことがあげられます。
カーボンニュートラルの定義は次のとおりです。
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
※ここでの温室効果ガスの「排出量」「吸収量」とは、いずれも人為的なものを指します。
上記の宣言に大きな影響を与えているのがパリ協定です。
パリ協定は、2015年に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された気候変動に関する国際的な枠組みです。
以下の目的と目標が定められています。
目的 |
世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温の上昇を2℃より十分低く保つ。 |
目標 |
目的を達成するため、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出・吸収の均衡を達成する。 |
参照元:環境省「第2章 パリ協定を踏まえて加速する気候変動対策」
温室効果ガスは、大気中に存在する熱(赤外線)を吸収するガスです。
温室効果ガスには、さまざまな種類があります。
代表的なものとしてあげられるのが、二酸化炭素(CO2)、一酸化窒素(N2O)、メタン(CH4)です。
2021年度における日本の温室効果ガス排出量の割合は、二酸化炭素が9割以上を占めます。
参照元:地球環境研究センター「日本国温室効果ガスイベントリ報告書2023」
産業廃棄物分野におけるCO2排出量の現状
2018年度における廃棄物分野の温室効果ガス排出量は、CO2換算で3,782万トンです。
この値は、LULUCF(CO2の吸収源となる森林などの陸上部門)を除く日本の総排出量の3.0%に相当します。
2005年比に換算するとマイナス16.3%、2013年度比に換算するとマイナス4.5%です。
廃棄物分野の温室効果ガス排出量は、2000年から増減を繰り返しつつ減少傾向といえるでしょう。
温室効果ガス削減に向けた有機性廃棄物埋立量の削減、準好気性埋立の導入などの取り組みが影響していると考えられています。
廃棄物焼却にともなう温室効果ガス排出は、2009年以降、大きく変動していません。
しかし内訳をみると、廃棄物エネルギー利用にともなう排出割合は増加しています。
具体的な排出割合は、2013年度が56%、2016年度が61%です。
したがって、産業廃棄物分野は、エネルギー分野など他分野での温室効果ガス排出削減に間接的に貢献していると考えられます。
CO2排出係数について
脱炭素経営に取り組むにあたり押さえておきたいのがCO2排出係数です。
簡単に説明すると、一定のエネルギーを使用したときに排出するCO2の量といえるでしょう。
企業活動にともない排出するCO2の量を算出したいときなどに用いられます。
ここでいうエネルギーは、一般的に電力を指します。
この場合、CO2排出係数は「電力会社が1kWの電力を生み出すためにどれくらいのCO2を排出しているか」を表す値といえます。
したがって、発電方法や電力事業者によりCO2排出係数は異なります。
参照元:環境省「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)-R4年度実績- R5.12.22 環境省・経済産業省公表」
CO2排出量の算定方法
CO2排出量は、以下の計算式で算定します。
CO2排出量(kg-CO2)=エネルギー使用量(kWh)×CO2排出係数(kg-CO2/kWh) |
参照元:環境省「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)-R4年度実績- R5.12.22 環境省・経済産業省公表」
基礎排出係数は基礎排出量の算定、調整後排出係数は調整後排出量の算定に用います。
調整後排出係数は、非化石証の環境価値など、さまざまな要素を反映した指標です。
いずれにせよ、エネルギー使用量が同じであれば、CO2排出係数が低いほど、CO2排出量は少なくなります。
脱炭素経営のメリット
脱炭素経営は、企業が環境に配慮しながら、経営に脱炭素の視点を取り入れることを指します。
一般的に、次のメリットがあると考えられています。
企業の評価の向上
脱炭素経営は、企業の評価を高める取り組みと考えられています。
大手企業は、脱炭素経営をいち早く取り入れ、取引先に対してもCO2排出量の削減を求める傾向があります。
そのため、CO2排出量削減に取り組むことは、競争力の強化につながる可能性があります。
また、金融機関もカーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。
そのひとつとしてあげられるのが、脱炭素経営に取り組む企業に対する融資条件の優遇です。
魅力的な条件で融資を受けられる可能性もあります。
消費者、求職者、投資家などにアピールできる点も見逃せません。
マーケティング戦略の一環として、脱炭素経営を活用することもできます。
補助金・支援制度を利用できる
補助金や支援制度を利用できるケースがある点も脱炭素経営のメリットとしてあげられます。
たとえば、環境省、経済産業省、国土交通省は、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、トラックなどの電動化(BEV、PHEV、FCVなど)を支援する「商用車の電動化促進事業」を行っています。
具体的な内容は次のとおりです。
対象 |
以下の事業者のうち、国が定める目標などに準じる非化石エネルギー自動車の導入計画を設定している事業者。
|
補助金交付申請額 |
車両価格から他の寄付金、地方公共団体の補助金を引いた金額と基準金額を比較して低い方(基準額は車両により異なります) |
参照元:一般財団法人環境優良車普及機構「商用車の電動化促進事業(トラック)」
利用できる補助金、支援制度などは、事業者や時期などで異なります。
詳しくは、国や自治体などでご確認ください。
産業廃棄物処理業者のCO2排出量を管理する方法
ここからは、産業廃棄物処理業におけるCO2排出量の管理方法を紹介します。
エクセルによる管理
事業規模がそれほど大きくない場合は、エクセルを使って管理できます。
公的機関が提供している無料計算ツールなどを活用するとよいでしょう。
計算式があらかじめ記入されているため、所定の項目に数値などを入力するだけでCO2排出量を算定できます。
ただし、何かしらの変更が生じた場合は、計算式などを修正しなければなりません。
手入力の手間がかかる点にも注意が必要です。
デメリットを理解したうえで選択したい管理方法といえるでしょう。
システム導入によるCO2の見える化
専用のシステムを導入してCO2排出量を管理することもできます。
メリットは、マニフェストの情報から産業廃棄物の運搬時に発生するCO2排出量を自動で算定できることです。
そのため、手入力の手間を省くことができます。
また、CO2排出量を可視化できるため、脱炭素経営の指標などとしてもデータを活用できます。
導入コストはかかりますが、優れた管理方法といえるでしょう。
産業廃棄物業界もCO2排出量削減を求められている
ここでは、産業廃棄物業界におけるCO2排出について解説しました。
2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、産業廃棄物業界も脱炭素経営ならびにCO2排出量の削減を求められています。
脱炭素経営には、企業の評価が高まる、補助金や支援制度を活用できるなどのメリットがあります。
自社の競争力を高めるため、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
CO2排出量は、専用のシステムを導入すると管理しやすくなります。
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