産業廃棄物処理業界がDX化を求められる理由とDX化を進めたい業務
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産業廃棄物適正処理推進センター基金とは?
産業廃棄物の不法投棄は現在も継続している問題です。
毎年、新たな不法投棄事案が発生しています。
この問題を解決するため活用されているのが、産業廃棄物適正処理推進センター基金です。
基金は国の補助金と産業界の出捐金で成り立っているため、排出事業者・処理業者・収集運搬業者も無縁ではありません。
ここでは、産業廃棄物の不法投棄の現状を紹介するとともに産業廃棄物適正処理推進センター基金の概要や仕組み、活用状況などを解説しています。
同基金について理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
< 目次 >
産業廃棄物の不法投棄の現状
環境省は都道府県および政令指定都市の協力を得て、産業廃棄物の不法投棄などについて調査を実施し、結果を公表しています。
具体的な調査項目は以下の3点です。
【調査項目】
- ・新たに判明した不法投棄等事案
- ・新たに判明した不適正処理事案
- ・年度末時点の不法投棄等事案の残存量
令和3年度の調査結果は次のようになっています。
調査項目 |
調査結果 |
新たに判明した不法投棄等事案 |
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新たに判明した不適正処理事案 |
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年度末時点の不法投棄等事案の残存量 |
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法律による罰則の厳格化等により、不法投棄の件数や量は一定の減少が見られましたが平成25年度の不法投棄件数159件、不法投棄量2.9万トンあたりから、ほぼ横ばい状態と言えます。
出典:環境省「不法投棄等の状況(令和3年度)の調査結果資料」
産業廃棄物適正処理推進センター基金とは?
以上の調査結果を見てわかる通り、不法投棄は現在も続いている問題です。
不法投棄が生活環境保全上の問題を生き起こし、原因者などがわからない場合は、都道府県などが行政代執行を実施します。
その費用の一部は、国の補助金と産業界の出捐金により積み立てられた基金から賄われます。
これが産業廃棄物適正処理推進センター基金です。
同基金は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で次のように定められています。
第十三条の十五 適正処理推進センターは、第十三条の十三各号に掲げる業務に関する基金を設け、これらの業務に要する費用に充てることを条件として事業者等から出えんされた金額の合計額をもつてこれに充てるものとする。
2 環境大臣は、前項に規定する基金への出えんについて、事業者等に対し、必要な協力を求めるよう努めるものとする。
産業廃棄物適正処理推進センター基金は、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。
産業廃棄物適正処理推進センター基金の仕組み
前述の通り、産業廃棄物適正処理推進センター基金は国の補助金と産業界の出捐金で成り立っています。
毎年度の基金の造成割合目標は「産業界:国=4:3」です。
都道府県・政令市からの協力要請を受けて、行政対応に大きな問題がない場合などに限り財政支援を行っています。
基金からの補助率は7/10です。
残りの3/10は都道府県・政令指定都市が負担します。
同基金から支援を受ける場合、支障除去等の措置にかかる費用の負担割合は「産業界:国:都道府県・政令市=4:3:3」になります。
ちなみに、財政支援の対象となるのは、平成10年6月17日以降に発生した事案に限られます。
出典:環境省「不法投棄等の支障除去等事業に対する財政支援(産業廃棄物適正処理推進センター基金)について」
産業廃棄物適正処理推進センター基金のメリット
産業廃棄物適正処理推進センター基金には、さまざまなメリットがあります。
代表的なメリットといえるのが、行政代執行にかかる財政負担を抑えられるため、行為者に対して措置命令を出しやすくなることです。
生活環境保全上の問題を速やかに解決できる可能性があります。
行政代執行に対する地域の理解を得やすくなる点もメリットといえるでしょう。
他府県から流入した産業廃棄物(不法投棄)に、当該自治体が行政代執行で対処しようとすると、地元関係者から財源の問題を指摘されることが少なくありません。
同基金を活用すれば当該自治体の負担を抑えられるため理解を得やすくなります。
また、基金の仕組みを説明することで、不法投棄と向き合っている産業廃棄物業界に対する信頼も高まります。
以上のほかでは、財政支援の対象を、不法投棄等事案の発覚時の行政対応について行為者の特定作業が迅速かつ的確であったかなど「行政対応に大きな問題がない場合など」に限定している点もポイントです。
都道府県などに、適正な対処を促す制度となっています。
産業廃棄物適正処理推進センター基金の活用状況
環境省の発表によると、平成11年から令和3年までの支援件数合計は110件、支援額合計は5,845,637,000円です。
支援額の割合が高い廃棄物種別は以下のようになっています。
【廃棄物種別】
- 1.混合廃棄物:49.4%
- 2.硫酸ピッチ等:16.8%
- 3.廃プラスチック等:11.8%
- 4.汚泥:7.5%
- 5.廃油等:4.0%
- 6.木くず:4.0%
令和2~3年度実施事業として、神奈川県の事案があげられます。
平成28年2月頃から大量の建設系廃棄物を不正に保管していた無許可業者に対し、平成29年12月に神奈川県は廃棄物の撤去を命じる措置命令書を発出しました。
その後、命令が履行される見込みはなかったため、神奈川県は行政代執行実施に向けて産業廃棄物適正処理推進センター基金から支援を受けています。
本事案における支援額は134,793,000円です。
産業廃棄物適正処理推進センター基金は不法投棄撲滅に向けた基金
本記事では、産業廃棄物適正処理推進センター基金について解説しました。
同基金は、不法投棄された産業廃棄物による支障を除去するため、都道府県が行政代執行をするときに費用の一部を補助する基金といえるでしょう。
基金は国の補助金と産業界の出捐金で成り立っています。
同基金には、都道府県などが措置命令を出しやすくなる、産業界に対する信頼が高まるなどのメリットがあります。
令和3年までに合計で110件の支援が実施されています。
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