資源循環とは?重要視される理由や世界・日本での取り組みを解説
2023/09/21
2024/3/16
- 資源循環
- サーキュラーエコノミー
- 循環型
はじめに
資源循環は、使い終えた製品を廃棄するのではなく、資源として循環させる考え方です。資源循環が必要とされる理由や3R、世界や日本での取り組みなどについて解説します。
資源循環とは?重要視される理由や世界・日本での取り組みを解説
資源の枯渇や廃棄物の増加が世界的な課題となっている現在、企業はその社会的な責任を果たすため、規模にかかわらず、廃棄物の削減に取り組む必要があります。廃棄物の削減に貢献する考え方として注目されているのが「資源循環」です。
この記事では、資源循環が必要とされる背景や資源循環につながる3R、世界・日本での取り組みなどについて解説します。
資源循環は製品を廃棄せず資源として循環させる考え方
資源循環は、使い終えた製品を廃棄するのではなく、資源として循環させる考え方です。従来の消費活動は、資源を使って製品を作り、消費者がそれを購入して使い、使い終えたら廃棄するというスタイルですが、便利さを追い求めた結果として、大量消費・大量生産・大量廃棄という問題が生じるようになりました。また、従来の消費活動は、製品を作るための原料不足や、廃棄物の処理方法といった問題が発生する原因となっています。
一方、資源循環での消費活動においては、資源を使って製品を作り、消費者が購入して使った後、商品を回収して原材料に加工したり、別の場所で再利用したりします。これと同時に、できるだけ廃棄を減らす取り組みを行い、資源の消費量と廃棄物の発生量を抑えることを目指します。資源を無尽蔵に消費してゴミにするのではなく、循環させて最大限に活用するのが資源循環の特長です。
資源循環の実践によって、廃棄物の発生を抑制するとともに、限りある資源を消費し続けるだけの社会から、資源を循環させて有効活用できる社会へと移行できるでしょう。また、資源循環と関連する概念の「循環型社会」は、資源循環の実現を目指す社会の在り方を指しています。
資源循環とサーキュラーエコノミー
資源循環の考え方を用いた、経済の在り方がサーキュラーエコノミーです。資源循環とサーキュラーエコノミーは密接な関係を持っていますが、同一の意味ではありません。サーキュラーエコノミーが目指すのは、資源循環そのものではなく、資源の消費を減らしたり製品を再利用したりする、廃棄を前提としない経済活動です。そのため、資源循環はサーキュラーエコノミーを実現するための手法のひとつだといえるでしょう。
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資源循環が必要とされる理由
資源循環が必要とされる理由は、資源が枯渇する危機に直面しているためです。資源の利用や廃棄物の抑制の課題を解決するため、資源循環が重要視されています。従来の消費活動は、資源の利用や廃棄物の処理を、無限に行える状態でなければ維持していくことができません。しかし、実際には世界人口の増加や経済成長によって、資源が枯渇する危機に直面しています。
また、廃棄物の処理についても課題があります。廃棄物の焼却や埋め立ては少なからず、自然に負荷をかける行為です。廃棄物の処理方法を変更・最適化するといった対応では限界があるため、発生する廃棄物自体を減らし、自然にかける負担を減らしていかなければいけません。
資源循環は、資源の枯渇と廃棄物の抑制というふたつの課題を解決できる方法です。資源循環によって、使用済みの製品や不用品を、捨てることなく資源として再利用できれば、廃棄物は発生しません。また、製品を資源として利用すれば、新たに資源を投入する必要もなくなります。現在の社会には、すでに過去につくられた多くの製品の「ストック」があります。新たに資源を使うのではなく、現在のストックを資源として循環させることで、廃棄物をなくし、資源をやみくもに消費しない社会の実現を目指す必要があるのです。
資源循環に重要な3R
3Rとは「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の頭文字を取った言葉です。資源循環を行うためには、3Rを意識して行動する必要があります。3Rを構成するそれぞれの要素について解説します。
リデュース
リデュースは、廃棄物の発生を抑制する取り組みのことです。製品を製造し、販売するという一連の経済活動の中で、できるだけ廃棄物が発生しない工夫を行います。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
<リデュースの具体例>
・レジ袋を廃止する
・包装方法を見直してシンプルにする
・顧客にマイボトルの持参を呼びかける
・使い捨てを前提としない製品や長寿命の製品を開発する
・製品の容器を小さくする、または薄くすることで結果的にゴミの量を減らす
リデュースの方法はさまざまです。事業内容に応じて、何ができるかが変わってくるでしょう。それぞれの事業内容に応じたリデュースを実施することで、資源を守るとともに、無駄なコストの削減にもつながります。
リユース
リユースは、商品をそのままの状態で再び使用することを指す言葉です。具体的には、以下のような行動がリユースに該当します。
<リユースの具体例>
・着なくなった洋服を人に譲る
・リサイクルショップに商品を売る
・フリマアプリやフリーマーケットを活用する
リユースは製品の再利用のため、多くの場合で企業よりも消費者が取り組む必要があります。一方で、企業においても実践できる行動もあります。例えば、事業内容に応じて「ハンガーを使い捨てではなくリユースできるものに切り替える」「ビンを回収して洗浄後再度利用する」などといった活動で、リユースを取り入れることが可能でしょう。
リサイクル
リサイクルは、商品を回収後、資源として再利用することです。個人が消費する紙やプラスチックといった資源は、回収・再資源化すれば、新たな製品に生まれ変わります。リサイクルを積極的に行うことで、限りある資源の消費を抑えることができます。
また、企業で発生する段ボールやコピー用紙なども、古紙回収に回したり、シュレッダーのゴミのリサイクル処理を行ったりすることで、再度資源として活用することが可能です。また、製品によっては、自社製品の回収によるリサイクルができる場合もあります。リサイクルできる資源を廃棄してしまっていないか、改めて確認してみましょう。
世界での取り組み
資源循環は、日本だけでなく全世界で取り組むべき課題です。世界で行われている資源循環の取り組みのうち、日本が参加している「バーゼル条約」と「アジア太平洋3R推進フォーラム」について紹介します。
バーゼル条約
バーゼル条約は、有害廃棄物を無断で他国に持ち出すことや環境汚染を防止するための条約です。正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」で、1989年にスイスのバーゼルで採択されました。2023年3月時点で世界188ヵ国、1地域、1機関が条約を締結しています。
バーゼル条約では、国境の外に有害廃棄物を移動する際の国際的な手続きなどが規定されています。日本は、かつてからリサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入しており、廃棄物の輸出入をルールに従って実施し、国際貢献を行うことを目的に、1993年に条約締結しています。
アジア太平洋3R推進フォーラム
アジア太平洋3R推進フォーラムは、3Rに関するハイレベルの政策対話の促進、3Rプロジェクト実施への支援促進などを目的とした組織で、日本の提唱によって2009年に設立されました。中国や韓国、ニュージーランド、タイ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど39ヵ国が参加しています。第1回フォーラムの東京での開催以降、アジア各国で開催されており、2020年にはウェビナー形式でのフォーラムが開催されました。開催ごとに、3Rに関連するさまざまなテーマが設定され、アジア地域での資源循環につながる議論が行われています。
日本での取り組み
日本でも、資源循環に関する複数の取り組みが行われています。ここでは、循環型社会形成推進基本法と循環経済パートナーシップ制度について解説します。
循環型社会形成推進基本法
循環型社会形成推進基本法は、2000年に公布された、リサイクルを推進するための法律です。当時、日本では、廃棄物の発生量が高い水準にあるにもかかわらず、廃棄物処理施設が埋まりつつあるという問題が発生していました。また、リサイクル率も一般廃棄物約10%、産業廃棄物約42%にとどまっていました。
こうした問題を解決するためには、大量生産、大量消費、大量廃棄が当たり前の社会を改革し、環境負荷の少ない循環型社会を目指す必要があり、循環型社会形成推進基本法が制定されたのです。循環型社会形成推進基本法では、循環型社会の在り方の明示や、取り組むべき課題の優先順位、循環型社会を形成するための国の施策などが定められています。また、2000年には、循環型社会形成推進基本法と同時に、廃棄物処理法や再生資源利用促進法の改正、建設資材リサイクル法・食品リサイクル法・グリーン購入法の制定も実現しました。
循環経済パートナーシップ
循環経済パートナーシップ(J4CE)は、循環経済実現に向けた、官民連携のための組織です。2021年3月に環境省、経済産業省、経団連が立ち上げた組織で、趣旨に賛同して参加を希望する経団連の会員、または創設団体が参加を認めた企業や団体は、パートナーシップへの参加登録が可能です。
パートナーシップに加わると、循環経済に関する官民意見交換といった機会を得られるとともに、自社の取り組み事例を広く紹介してもらえる可能性もあります。循環経済パートナーシップの公式サイトでは、企業ごとのさまざまな取り組みの実例が紹介されています。自社にとって参考となる資源循環の取り組みを見つけられるかもしれません。
資源循環のためにできること
資源循環を実現するためには、個人や企業が、それぞれの生活や経済活動の中で3Rを意識し、実践していくことが大切です。個人であれば、不要な紙袋や包装を断る、マイボトルやマイ箸を持参する、リサイクルできる資源ゴミをきちんと分別して捨てるといったことが資源循環につながります。また、使用した製品を安易に捨てるのではなく、修理して使い続けられないか検討したり、必要な人に譲ったりするのも良いでしょう。使い捨て商品を簡単に買わずに、長く使い続けられる商品を選ぶのもおすすめです。
企業も、過剰包装を控えたり、自社製品の回収システムを構築したり、資源として循環が可能な製品の開発を行ったりする方法などで、資源循環に貢献できます。企業が資源循環を実現するためには、回収網の整備や製品設計の再検討といった、投資が必要になることもありますが、その分、資源循環に大きく貢献することができるでしょう。
循環経済への転換に向けて
資源を循環させる経済活動への転換は、企業の事業活動の持続可能性を高め、中長期的な競争力の確保にもつながります。循環経済への移行は欧州などで先行していますが、日本でも2020年に経済産業省が「循環経済ビジョン2020」を取りまとめ、政策として循環経済への移行を明確に打ち出しています。
そのため、さまざまな産業において、企業は資源循環への移行を、単純な廃棄物・環境対策としての3Rの延長としてではなく、新たなビジネスチャンスととらえて、取り組むことが重要です。
資源を使って製品を作る製造業などの「動脈産業」が循環経済へ転換するためには、資源の回収や再生を担う「静脈産業」との連携が必要となるでしょう。また、消費者や投資家の役割も重要です。消費者は循環経済の一員として、環境負荷の低い製品を優先的に購入します。一方、投資家は循環経済への転換を進める企業を評価し、ESG投資などによって好循環を創出する役割があります。
企業が資源循環に取り組むにあたっては、専門企業との協業が効果的
廃棄物削減の取り組みを進めることで、企業も資源循環に貢献することが可能です。一方で、自社のみでは、何から着手すれば良いかわからなかったり、適切な方法が見つからなかったりすることもあるでしょう。
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などのさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。