急な電力需給のひっ迫!! 節電対策の技術に迫れ
2022/08/22
2023/12/20
- 再生可能エネルギー
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2022年3月、2012年の運用開始以来初の電力需給ひっ迫警報が東京電力管内で発令されました。電力需給のひっ迫が騒がれるなかで、企業でも、家庭でも、身近に出来る省エネ対策を講じる必要があります。
電力需要ひっ迫警報の発令
2022年3月16日、福島沖で大きな地震が発生しました。この地震により新幹線が脱線するなどの被害が発生し、電力需給面への影響として火力発電所の停止が生じました。結果、2022年3月22日に関東地方において、急激に気温が下がったことで電力が足りず、政府が電力需給ひっ迫警報(※)を発令する事態になりました。
また、2022年6月27日、東京電力管内において、例年より早い梅雨明け宣言と、当初の想定より気温の上昇が見込まれたため、予備率が5%を下回る見通しとなったことから、新設された電力需給ひっ迫注意報が初めて発令されました。停電は免れることができましたが、改めて我々が生活するうえで電力というエネルギーに依存していることを考えさせられる出来事だったのではないでしょうか…
今後も冷暖房などを多く使う夏場や冬場は、電力がひっ迫することも懸念され、企業でも家庭でも身近にできる省エネ対策を講じていく必要があります。
※電力の需要に対する供給の余力を示す「予備率」が広域で5%を切った時に、注意を呼びかけるために「電力需要ひっ迫注意報」が発令されます。安定して電気を供給するには、3%以上の予備率が必要と言われ、広域で3%を切ると「電力需給ひっ迫警報」が発令されます。
今からできる省エネ(節電)対策を考えよう
我々の生活は、電力というエネルギーに依存しています。電力が供給されない(停電が起きる)ことで、事業活動や日常生活に大きな打撃を与えてしまいます。今回は、電力の削減や、省エネルギー商品の選択ができるよう、省エネ技術や、省エネ対策事業を見ていきましょう。
〇省エネ技術の紹介
省エネルギーを進めるためには、それぞれの技術開発が必要です。現在の省エネ技術を紹介します。
①ヒートポンプ
気体は、圧縮すると温度が上昇し、膨張すると温度が低下します。その原理を利用した技術がヒートポンプです。エアコンや冷蔵庫などの身近な家電製品にも利用されています。現在の技術では、消費電力の3倍以上の熱エネルギーを生み出すことができます。
②燃料電池
都市ガスなどから得られた水素を、空気中の酸素と化学反応させて発電します。発生する熱も温水として利用できるため、エネルギー効率の高い技術です。現在は、自動車用、産業用、家庭用でそれぞれ技術開発が進んでおり、普及が始まっています。
③インバータ
交流電気をいったん直流にし、さらに周波数の異なる交流に変えることで、モーターの回転数を制御する技術です。交流のままでは、交流の電圧や周波数を自在に変えて出力することが難しいため、いったん交流をコンバータ回路などで平らに均らして直流にした後、インバータ回路で短冊のようにバラバラに分け、それらを組み合わせることで電圧や周波数を変えて、疑似的に交流を作り出すような方法が採用されています。エアコンや、冷蔵庫、家電などで利用されており、インバータ回路によって電圧や周波数を変えることで、モーターの回転をコントロールして、無駄なエネルギーを使わないようにする効果があります。
例えば、エアコンを例に見てみましょう。インバータの搭載されていないエアコンは冷えすぎると運転を休止し、暑くなると運転を再開させるしかないため、室内の温度が安定せず、電力消費が多くなりとても効率が悪いです。一方で、インバータが搭載されたエアコンは、冷房の運転開始時に高速でモーターを回してファンを回転させ、設定温度に近づいたらファンを低速にして緩やかな変化を付けて運転を継続させます。結果、ONとOFFしかないエアコンよりもムダな動きが減らせて省エネでの運転が可能になります。
④複層ガラス
複層ガラスは2枚または3枚のガラスで構成された窓ガラスです。ガラス間にガスなどを封入することで、より熱の伝達を防ぎ、省エネルギー効果を発揮しています。製品によって「アルゴンガス」「クリプトンガス」などの低熱伝導率な不活性ガスを封入しているものや、乾燥剤および乾燥空気を封入して結露を防いでいるもの、真空状態にして熱を伝えない工夫が施されているものなども存在します。
⑤LED(発光ダイオード)
LEDとは「発光ダイオード」と呼ばれる半導体のことで、” Light Emitting Diode “の頭文字をとったものです。 1993年に窒化ガリウムをベースにした高輝度青色LEDが実用化されたことにより、白色LEDが実現し、第4の照明用光源として注目されています。
蛍光灯に比べて消費電力が約4分の3、寿命が4~7倍と言われており、近年低価格化も進んだことで、家庭内の照明や街路灯、信号機などに普及しています。
○省エネ対策事業
省エネルギーを進めるためには、個別技術の開発に加えて、複数の事業者や地域連携するシステムとしての対応が必要です。また、エネルギーの使用実態を把握し、それに適した供給を行うために、AIやIoT、ビックデータなどの活用も重要です。
①ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
ZEHは、外壁の断熱性能の向上や高効率な設備システムの導入などにより大幅な省エネルギーを実現し、かつ再生可能エネルギーを導入することにより年間のエネルギー消費量収支ゼロを目指した住宅のことを言います。
2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画においては、以下の政府目標の達成に向けて、ZEHの普及を推進しています。
・2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す
・2030年において、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す
②コージェネレーション
コージェネレーションは、発電を行うことで発生する熱で温水や蒸気を作り、建物や地域の給湯や冷暖房に使用するシステムです。冷却水や排ガスなどの排熱を有効利用できるため、エネルギー効率が優れており、地域のインフラが整えば地域全体として省エネルギー化を図れます。
家庭用では「エネファーム」という名称の家庭向け燃料電池が販売されています。都市ガスやLPG、灯油などから水素を作り、発電を行うとともに、発生した熱エネルギーを給湯や暖房に利用する技術です。
③スマートグリッド
スマートグリッドは、電力のスマートメーター(電力の見える化と外部からの家庭内電力の正誤などの機能を持つ次世代電力量計)などの通信・制御装置などを活用し、送電調整や時間帯別の多様な電力契約などを可能にする電力網です。エネルギー需給の管理を行うことで、電力を効率よく利用することが可能です。また、地域全体でスマートグリッドを活用することで、交通システムや市民のライフスタイルに合わせた次世代のエネルギー需給システムを作り上げることも可能です。
最後に
最後に、身近な家庭でできることをもう少しだけ考えてみましょう。
資源エネルギー庁の公表データによると、一日の電力消費量の割合で一番多いものはエアコンで、冷蔵庫・給湯・照明と続きます。
出典:経済産業省資源エネルギー庁 公表データ
例えば、エアコンであれば、目詰まりしたフィルターの清掃をすることで節電対策になります。また、複層ガラスは有効ですが、夏の日中であればすだれやカーテンなどで窓からの日差しを和らげるだけでも省エネ対策になります。
冷蔵庫であれば、食品の詰め込みすぎや冷やしすぎを避け、扉を開ける時間を減らすことで省エネ対策になります。照明については不要なものはこまめに消灯し、LEDに変更することも省エネ対策に繋がります。
今後も冷暖房などを多く使う夏場や冬場は、電力がひっ迫することも懸念されていますので、家庭でも企業でも、身近にできる省エネを行いたいですね。
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
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