企業のサーキュラリティ(循環性)を測定するツール②~エレン・マッカーサー財団の「Circulytics」とは~
2022/08/08
2023/11/10
- サーキュラーエコノミー
- 脱炭素社会
- 循環型社会
はじめに
Circulyticsは、2020年1月にエレン・マッカーサー財団より無料提供された、サーキュラーエコノミーのパフォーマンスを測定する総合的評価ツールです。同年10月に新しい指標およびテーマなどが追加されて「Circulytics 2.0」として更新されています。2021年8月までの統計データによると、Circulytics を利用する企業は1,250社を超え、そのうち年間収益10億ドルを超える企業は約17%を占めています。
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3つの循環型経済原則を基軸とした評価指標
Circulyticsは製品やマテリアルフローの評価にとどまらず、事業戦略や運営などを含む企業全体のサーキュラリティを総合的に評価します。また、評価レポートの中では、業界毎のベンチマークとなる情報の提供もあり、自社のパフォーマンスと比較をすることで、企業のサーキュラーエコノミー移行のための意思決定および戦略策定に役立ちます。Circulyticsの特徴は、設問に回答することで第三者評価による測定結果が得られる点です。7月4日のコラムで紹介した自己評価で完結するCTIとは異なります。
エレン・マッカーサー財団の循環型経済原則
エレン・マッカーサー財団では、下記の3つの循環型経済原則を提唱しています。「Circulytics」を用いて企業のサーキュラーエコノミーのパフォーマンスを評価する前提として、3つの原則のうちいずれか1つ以上に該当し、かつ他の2つに逆行しないことが必要とされています。
・Eliminate waste and pollution(廃棄物と汚染を排出しない)
・Circulate products and materials (at their highest value)(製品と材料を高い価値を保持したまま循環させる)
・Regenerate nature(自然を再生する)
Circulyticsの構成
Circulyticsは、Enablers(促進要因)とOutcomes(成果)の2つのカテゴリに大きく分けられます。
Enablers(促進要因)のカテゴリは、5つのテーマ及び20個の指標から構成されています。Outcomes(成果)のカテゴリは、6つのテーマ及び17個の指標から構成されています。
カテゴリ(2つ) |
テーマ(11つ) |
指標(37つ) |
Enablers (促進要因) |
①Strategy and Planning(戦略と計画) |
・全20の指標(定性) |
②Innovation(イノベーション) |
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③People and Skills(人材と技能) |
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④Operations(運営) |
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⑤External Engagement(外部の参与) |
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Outcoms (成果) |
⑥Products and Materials(製品と材料) |
・全17の指標 (定量・定性) ・業界・業種によって4~17指標で各企業を評価 |
⑦Services(サービス) |
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⑧Plant, Property,and Equipment Assets(PPE資産) |
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⑨ Water(水) |
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⑩Energy(エネルギー) |
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⑪Finance(金融財政) |
出典:エレン・マッカーサー財団「Circulytics Indicator List」より作成
Circulytics の評価
Circulyticsは、カテゴリ、テーマ、指標ごとにスコアとウエイトが設定され、それらの加重平均で最終スコアを算出します。この最終スコアをもってエレン・マッカーサー財団は、A~Eの評価および業界ベンチマークとの比較が記載されるスコアカードを企業に提供します。
(1)Enablers(促進要因)の評価
戦略と計画、イノベーション、人材と技能、運営、外部の参与の5つの方面から定性的な指標を設けて、企業が将来、より循環型のビジネスへ移行するための体制を整えているのかを評価します。
(2)Outcomes(成果)の評価
製品および材料の流れ、サービスの提供、PPE資産の調達および廃止状況、水の流れ、エネルギーの使用、金融業界の資金調達などの方面から定性及び定量的な指標を設けて、企業が実際に取り組んだサーキュラーエコノミー活動の結果を評価します。評価される企業の業界業種によって評価の指標およびウエイトが異なります。
おわりに
従来のリニア(一方通行)型経済モデルでは、私たちが生活している地球を気候変動や資源枯渇などのさまざまな環境危機に曝しています。これらから脱却するために、企業が率先して社会的責任を果たし、環境負荷と経済価値のバランスを考慮した経営、循環型の事業活動へ転換する必要があります。サーキュラー型経済モデルへの移行を成功させるためには、Circulyticsなどのサーキュラリティを評価するツールを利用し、移行計画の立案と計画の評価を行うことが今後求められています。
こちらのコラムもご覧ください
企業のサーキュラリティ(循環性)を測定するツール①~Circular Transition Indicatorsv3.0とは~
参考:エレン・マッカーサー財団「Data and insights」