【太陽光パネルコラム】太陽光パネルの適正処理に迫る!
2022/07/13
2023/12/20
- 脱炭素社会
- 省エネルギー
- 太陽光パネル
2030年代ごろから太陽光パネル由来の廃棄物が大量に排出されることが予想されています。そこで今回は、太陽光パネルの適正な処理の方法や、最新のリサイクル手法(処理技術)について紹介します。
導入が進む太陽光パネル
太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスの排出削減、新規産業・雇用創出、震災復興などの観点から注目されており、日本においては、2012年7月から開始した再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)や2022年4月から開始されたFIP(Feed-in-Premium)制度などにより、大幅な導入拡大が進んでいます。
その中で、特に太陽光発電は、スペースやコストの兼ね合いから、一般家庭でも取り入れやすく、脱炭素や地球温暖化対策の取り組みとして注目されることも多いため、家庭やオフィスビルなどでも導入量が増加傾向にあります。最近(2022年5月ごろ)では、東京都が新築住宅における太陽光パネル設置を義務化する方針を固めたことが話題にもなりました。
出典: IEA 「Snapshot of Global PV Markets 2021」
導入が進んでいる太陽光パネルですが、実は製品寿命が約25~30年とされており、2030年ごろから太陽光パネルを含む廃棄物が大量に排出されることが予想されています。そのため、適正に処理するための技術開発やスキーム作りの検討が進んでいます。
太陽光パネルの適正処理について
廃棄物処理法上では、事業活動として出た太陽光パネルと解体工事などから出た太陽光パネルは産業廃棄物に該当し、品目は「プラスチック類」「ガラス陶磁器くず」「金属くず」の混合物になります。一方、災害などで壊れた太陽光パネルは、一般廃棄物として処理されます。太陽光パネルを適正に処理するには専用の処理施設が必要となりますが、施設の数が足りておらず、大半は粗破砕して埋立処分されているのが現状です。そのため、以下のような処理技術が研究されています。
機械設備による破砕選別処理
粉砕機などで太陽光パネルを破砕し、それを振動や比重差を活用した分離にかけてガラスや金属を分けることで、廃棄物の発生量を圧縮する方法です。金属類やリサイクルできるガラス片は回収されますが、残った細かい粉砕品は埋立処分されます。処理における手間は比較的少ない処理方法です。
ホットナイフによる分離処理
外側のアルミフレームなどを前処理により外した後、ホットナイフ(熱したカッター)でガラスパネルとプラスチック樹脂を分離し、それぞれ素材としてリサイクルするか埋立処分する方法です。割れてしまったガラスの分離作業は難易度が高いというデメリットがあり、さらに、1枚毎に処理をする必要があるため、作業に多少の手間がかかる処理方法です。
ブラスト工法による剥離処理
外側のアルミフレームなどを前処理により外した後、使用済み太陽光パネルに粒状の投射材料を圧縮エアーなどでガラス表面に吹き付けることにより、ガラスを剥離する方法です。剥離したカバーガラスはふるい装置などを用いて分別されリサイクルされるか、そのまま埋立処分されます。シリコンセルの封止材(EVA)層が、吹き付けた投射材料の衝撃を吸収し弾くため、パネルへのダメージなどの影響がなく、リユース・リサイクルが可能です。また、この処理技術により、災害などで凹凸に変形してしまった太陽光パネルのカバーガラスも装置側の調整(クリアランスなど)無しでリユース・リサイクルができるメリットがあります。
事業者がきちんと廃棄できる仕組みづくり
太陽光パネルは種類によって、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれています。そのため、上記のような処理技術を用いても一部は管理型埋立処分場での処理が必要となり、埋立処分場のひっ迫の要因になるのではないかと懸念されています。埋立処分の低減と有用物の回収のためには、太陽光パネルメーカーおよび輸入販売業者が、処理業者などに積極的に情報提供をおこなっていくことが望まれます。
また、太陽光パネルの廃棄処理は、ほかの事業と同様に、発電事業者や解体事業者が責任をもつことが原則となります。しかし、廃棄する時点で事業者の資金力が不十分であるといった場合には、事業終了後の太陽光パネルの放置や不法投棄のリスクが高まってしまいます。そのため、自己で行う積み立てだけでなく第3者が外部で積み立てを担保する仕組みや、メーカーも関与した広域的な処理、関連するリサイクル法の改正などの仕組みづくりも、必要になるかと思われます。
株式会社JEMSでは、今後も、太陽光パネルの処理方法について注視するとともに、関係法令や制度においても、情報収集し、発信していきます。
〇関連コラム
〇各種ガイドラインのリンク
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版) ※環境省
使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン ※一般社団法人太陽光発電協会
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化や、食品ロスを削減するための食品廃棄物の見える化などのさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。