一般廃棄物に対するソーティング作業の重要性について
2022/04/25
2023/12/20
- ソーティング
- 循環型社会
プラスチック資源循環促進法(通称:プラ新法)が施行された中で、ソーティング(分別)に力を入れた取り組みをしている自治体を紹介します。
はじめに
環境省の調べでは、自治体等が運営する焼却施設は約900施設あり、日夜、一般廃棄物の処理を行っています。しかし、焼却施設は維持管理コストが掛かるほか、稼働できる耐用年数も25年程度(延命工事をすることで35年~40年)となっており、自治体の財源を圧迫しています。
維持管理コストと聞くと、メンテナンスや処理した廃棄物の埋立コストをイメージされる方が多いかもしれませんが、そのほかにも、助燃材(コークスや石油など)の投入費用等が維持管理コストとして掛かっています。焼却施設では、ダイオキシンを排出しないために決められた温度以上で廃棄物を燃焼させる必要がありますが、廃棄物の性状によって燃焼のしやすさが変わるため、必要に応じて助燃材が投入されています。
2022年4月にプラ新法が施行され、廃プラスチック類の排出・回収・リサイクルが強化されます(プラ新法における解説コラムはこちら)。そのため、焼却する廃棄物に含まれる廃プラスチック類(一般的にカロリーが高く燃えやすい)の量が相対的に減る可能性があり、より助燃材の投入量が増え、維持管理コストが増えるのではないかと懸念されています。
『ゼロ・ウェイスト宣言』
そんな中で、徳島県上勝町は、2003 年に自治体として日本で初めて『ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)宣言』を行いました。ゼロ・ウェイストとは、ごみ・無駄・浪費 をなくすという意味で、そもそも廃棄物を生み出さないようにしようという考え方です。1996年にオーストラリアの首都キャンベラにて世界初の『ゼロ・ウェイスト宣言』を出したことがきっかけで、その後、ヨーロッパ・北アメリカ大陸の各都市まで広がっています。
日本では、上勝町の他、いくつかの自治体で『ゼロ・ウェイスト宣言』や、それに似た宣言をしています。自治体独自の分別ルールを設け、焼却施設に依存しないリサイクルループの新たな取り組みが始まっています。
以下に、『ゼロ・ウェイスト宣言』等の宣言を行った一部自治体の人口と廃棄物の搬入実績を表にまとめました
※人口:総務省集計データから引用
※廃棄物の各施設搬入実績:環境省集計データから引用
①徳島県上勝町 『ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言』
人口 |
1,339人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2003年 |
|
廃棄物総搬量 |
302t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
244t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
55t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
0t |
|
最終処分施設搬入量 |
3t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
80.8% |
令和元年実績(全自治体中第2位) |
②福岡県大木町 『もったいない宣言』
人口 |
13,709人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2008年 |
|
廃棄物総搬量 |
3,149t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
1,994t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
1,151t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
4t |
|
最終処分施設搬入量 |
0t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
65.3% |
令和元年実績 |
③神奈川県葉山町 『ゼロ・ウェイスト宣言』
人口 |
31,656人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2008年 |
|
廃棄物総搬量 |
11,454t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
3,142t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
5,854t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
652t |
|
最終処分施設搬入量 |
0t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
50.4% |
令和元年実績 |
④熊本県水俣市 『ゼロ・ウェイストのまちづくり水俣宣言』
人口 |
22,967人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2009年 |
|
廃棄物総搬量 |
6,943t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
2,460t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
3,967t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
438t |
|
最終処分施設搬入量 |
78t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
35.5% |
令和元年実績 |
⑤神奈川県逗子市 『ずしゼロ・ウェイスト』
人口 |
56,909人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2012年 |
|
廃棄物総搬量 |
18,538t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
4,420t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
10,062t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
903t |
|
最終処分施設搬入量 |
0t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
47.5% |
令和元年実績 |
⑥奈良県斑鳩町 『斑鳩まほろば宣言』
人口 |
27,323人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2017年 |
|
廃棄物総搬量 |
6,722t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
3,142t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
3,580t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
0t |
|
最終処分施設搬入量 |
0t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
50.3% |
令和元年実績 |
⑦神奈川県鎌倉市 『かまくらプラごみゼロ宣言』
人口 |
161,630人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2018年 |
|
廃棄物総搬量 |
58,123t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
18,818t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
29,301t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
473t |
|
最終処分施設搬入量 |
0t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
52.6% |
|
⑧鹿児島県大崎町 『SDGs未来都市計画 大崎リサイクルシステム』
人口 |
12,089人 |
2021.12月現在 |
宣言年 |
2019年 |
|
廃棄物総搬量 |
4,037t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
3,336t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
0t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
0t |
|
最終処分施設搬入量 |
701t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
82.6% |
令和元年実績(全自治体中第1位) |
⑨福岡県みやま市 『みやま市資源循環のまち宣言』
人口 |
35,294人 |
2021.12月現在 |
廃棄物総搬量 |
9,418t |
令和元年実績 |
資源化施設搬入量 |
3,441t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
焼却施設搬入量 |
5,513t |
|
不燃・粗大ごみ施設搬入量 |
311t |
|
最終処分施設搬入量 |
153t |
※焼却・不燃・粗大ごみ処理後物含めず |
リサイクル率 |
36.0% |
令和元年実績 |
上勝町:ゼロ・ウェイスト宣言 活動紹介
2003 年に自治体として日本で初めて『ゼロ・ウェイスト宣言』を行った上勝町は、廃棄物を45品目に分別しています。分別を行っている廃棄物収集所(町内1箇所)に町民自ら廃棄物を運んでいるため、収集運搬車両が定期回収をしていません。なお、自分で持ち込むことができない家庭は、運搬支援制度を利用することで、奇数月に1回(2ヶ月に1回)、自治体が無料で戸別収集に回っています(ただし、粗大ごみは有料)。
『ゼロ・ウェイスト宣言』を行った2003年は、国内でダイオキシンが問題になっていた時期でもあり、町内には分別作業に反対の方もいましたが、大きな反対運動までは発展しなかったようです。上勝町では以前から、行政と住民で地域の課題をともに解決する活動が定着していたことも要因の一つでもあると考えられています。
ゴミステーションでは、持ち運ばれた廃棄物がその後どこに行き、処分にどのくらいコストが掛かるのか貼り紙が掲示され、処理ルートや処理費用が視覚的に分かるようになっています。また、常駐のスタッフもいるため、分別の仕方が分からない高齢者の方もサポートをしてくれます。上勝町と契約する処理業者は毎年入札で決められ、金属、紙など素材ごとに10社程度契約をしているようです。
〇上勝町ゼロ・ウェイストポータルサイト(ZERO WASTE TOWN Kamikatsu)
まとめ
環境省のデータによると、日本における一般廃棄物のリサイクル率は全体平均で20%程度です。残りの80%のほとんどが焼却処理に依存しています。
しかしながら、分別品目を増やした自治体は、焼却施設への搬入量が低く、リサイクル率が高い傾向にあります。特に、『ゼロ・ウェイスト宣言』を行い、ソーティング(分別)を強化した自治体では、80%を超えるリサイクル率を維持しています。
自治体ごとに居住者数や高齢化率、財源などが異なり、抱える課題も様々ですが、資源循環型社会を構築するうえで、ソーティングの強化は非常に重要な課題であると思います。
弊社は、IT技術や過去に培ったビックデータを活用し、資源循環型社会に向けた取組支援をご提案しています。特に、近年IoT技術を活用したソーティング作業のお問い合わせや、リサイクル品のトレーサビリティシステムのお問い合わせを多くいただいています。資源循環の構築にお困りの際は、無料相談も行っていますので、是非、お問い合わせください。(お問い合わせはこちら)
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化や、食品ロスを削減するための食品廃棄物の見える化などのさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。