廃棄物系バイオマスの利活用~ごみを資源に~
2022/04/18
2024/1/9
- カーボンニュートラル
- 循環型社会
はじめに
廃棄物系バイオマスとは、廃棄物として排出された生物由来の再生可能な有機性資源(石油など化石資源を除く)のことです。廃棄物系バイオマスを燃焼した際に放出されるCO2は、形成過程で吸収した炭素を起源とするCO2であるため、燃焼しても大気中のCO2を新たに増加させないことから「カーボンニュートラル」な資源と言われています。
内容
日本国内で発生する廃棄物のうち、約6割が廃棄物系バイオマスに当たります。これらを再利用せずに焼却や埋立処分を行う場合はただのごみになりますが、うまく活用すれば再生可能なエネルギーや資源となり、循環型社会の実現や地球温暖化の改善にもつながります。
廃棄物系バイオマスの種類
廃棄物系バイオマスは、主に生ごみや動植物残渣等の食品廃棄物、家畜のふん尿、下水処理等で発生する下水汚泥、農業残さ、建設発生木材等の木質系廃棄物の5種類に分けられています。そして、個々の性質によってさまざまな利活用方法があります。
出典:環境省「廃棄物系バイオマスの種類と利用用途」を参照して作成
廃棄物系バイオマス利活用の方法
廃棄物系バイオマス利活用の方法を大きく分類すると、「マテリアルとしての利用」と「エネルギーとしての利用」の2つになります。さらに細分化すると、飼料化、堆肥化、メタン化、エタノール化、バイオディーゼル化、熱分解ガス化、炭化、固形燃料化等になります。
身近な例では、工場での食品加工残さを加工して家畜用の飼料にする方法がマテリアルとしての利用になり、トウモロコシやサトウキビからエタノールを作って燃料として利用する方法はエネルギーとしての利用になります。
廃棄物系バイオマス利活用の事例
酒造メーカーである霧島酒造株式会社は、芋焼酎の製造において、芋選別段階で廃棄する芋くずと、焼酎製造段階で廃棄する焼酎粕を利用し、微生物によりメタン発酵してバイオガスを生成しています。そのバイオガスを自社の焼酎製造ラインのボイラー燃料として活用するとともに、九州電力に対して約650万KWhの売電を行い2億4~5千万円の収益を上げています。また、工場総燃料の一部がバイオガスで補われることで、年間約3000t のCO2削減を実現しています。
出典:農林水産省食料産業局「食品廃棄物のメタン化取組事例」 事業フロー図
おわりに
平成21年に「バイオマス活用推進基本法」が公布され、バイオマス活用の基本理念が定められました。廃棄物系バイオマスの利活用を促進するために、環境省では平成20年度から平成27年度までの間に、「廃棄物系バイオマス次世代利活用推進事業」「廃棄物系バイオマス利用推進事業」「廃棄物系バイオマス導入促進事業」等様々な支援事業を展開していました。
平成27年の時点では、廃棄物系バイオマス全体の有効利用率は約86%であるのに対して、食品廃棄物の有効利用率は僅か29%にとどまり、廃棄物系バイオマスの中で1番低い数値でした。そのため、国はそれを令和7年に約40%まで伸ばすことを目標として掲げています。
食品廃棄物のさらなる利活用が切迫する中、特に小売業及び外食業では多店舗、少量排出、異物混入等の理由で食品廃棄物の再生利用率が伸び悩んでいます。このような悩みを抱えている企業では、まず自社の食品廃棄物の発生状況を可視化し、自社の課題や特性に合わせた活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。
参照:農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課「バイオマスの活用をめぐる状況」
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
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