解説!!『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』③~「特定プラスチック使用製品」と新しい「当たり前」について~
2022/01/31
2022/1/31
- リニアエコノミー
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はじめに
4週に渡り「プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律」(通称:プラ新法)について解説を行っています。プラ新法については、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律とは?」にて解説をしました。第一回は「プラ新法の用語整理及び解説」として混同しやすい用語を整理し、第二回では法律で示されている「多量排出事業者」について解説をしました。
第三回となる今回は、私たちの生活の中でも関わりが深くなるであろう「特定プラスチック使用製品」について、国からの方針と事業者が意識すべきことについて解説します。
内容
プラ新法の条文では、「特定プラスチック使用製品」は「商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品」※1と定義されています。また施行令では具体的な特定プラスチック使用製品が以下のように定められています。※2
# |
製品 |
業種 |
一 |
フォーク、スプーン、テーブルナイフ、 マドラー及び飲料用ストロー |
各種商品小売業、各種食料品小売業、その他の飲食料品小売業、無店舗小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業 |
二 |
ヘアブラシ、くし、かみそり、 シャワーキャップ及び歯ブラシ |
宿泊業 |
三 |
衣類用ハンガー及び衣類用カバー |
各種商品小売業、無店舗小売業及び洗濯業 |
同施行令では特定プラスチック使用製品に関して、「当該年度の前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上」※3である事業者を「特定プラスチック使用製品多量排出事業者」(以下、多量排出事業者)とすることが規定されています。これらの特定プラスチック使用製品に対して、排出の抑制や再資源化への取組が判断基準から見て不十分と判断された場合、主務大臣は多量排出事業者に対して勧告、公表及び命令をすることができます。
特定プラスチック使用製品の使用の合理化
特定プラスチック使用製品に対して、使用の合理化に関する目標を定めて取り組むことが求められています。主務省令では取組例として提供方法の工夫や、提供する特定プラスチック使用製品の工夫が記されています。
(「プラスチックに係る資源循環の促進等に 関する法律」の政省令・告示について P17,18)
※1:プラスチックに係る資源循環促進等に関する法律 第二十八条
※2:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令 第五条
※3:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令 第六条
事業者の特定プラスチック使用製品に対する取り組み
特定プラスチック使用製品に対する事業者の取り組みは様々ありますが、今回は二つご紹介します。
一つ目は、原材料をプラスチックから他の材料へ転換している取り組みです。普段の生活の中でも使われているストローについて、プラスチック製の物から代替原料の物への転換が進んでいます。例えば、株式会社アキュラホームでは間伐材や国産材を使った木製のストローを開発し、ザ・キャピタルホテル東急では2019年から試験導入されています。
二つ目は、スターバックスコーヒーの取り組みです。スターバックスコーヒーは容器をストローが無くとも直接口を付けて飲める物へ変更し、ストロー自体の提供を行わなくなりました。この取り組みは2021年2月より一部商品から始まり、2021年4月からは全ての商品へ拡大され、年間約6,700万本分のストローの削減効果を出す見込みとなっています。
新しい「当たり前」を見据えた事業活動
特定プラスチック使用製品に関して、原材料をプラスチックから他の材料へ転換するだけでなく、減量化や長期使用できる工夫が事業者によって行われています。しかし、ここで私たちが考えなければならないことは、このプラ新法は国や自治体、事業者だけでなく、消費者にも行動の変化を求めていることにあります
2020年7月にレジ袋の有料化が行われました。環境省の調査※4では有料化前後で、レジ袋の提供を辞退していた消費者の割合が3割から7割に増加したとあります。多くの人がマイバックを持ち歩くことが「当たり前」となりました。特定プラスチック使用製品についても同じことが言えるかもしれません。消費者の意識には今まで無料で配布されていた物が有料になれば「損をしたくない」という意識が生まれます。「当たり前」が変わるタイミングには新たなビジネスチャンスがあるかもしれません。
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