資源循環社会を実現するための3つのプラスチックリサイクルとは?
2021/12/21
2022/1/31
- リニアエコノミー
- 循環型社会
はじめに
近年、私たちの社会的・経済的な活動によって生じる環境への負荷が注目されており、とりわけプラスチックが環境に与える影響は広く認識されるようになってきました。
また、循環型社会を形成するために様々な分野でリサイクルが推進されている中で、プラスチックごみのリサイクルは大きな課題となっています。
今回はプラスチックのリサイクルについて、特にその代表的な3つの方法についてご紹介します。
内容
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、廃プラスチックをプラスチックのまま原料として新しい製品を作るリサイクルです。多くは工場から排出される廃プラスチックが使われます。理由としては、廃プラスチックの樹脂の種類がはっきりしていること、汚れや異物が少ないこと、同質の物が大量に入手可能なことが挙げられます。
一般的に、回収された廃プラスチックは工場にて樹脂選別・異物除去が行われた後、粉砕されて「フレーク」、あるいは加熱融解後に粒状にされて「ペレット」などの再生原料となり、その後新たな製品として再生利用されます。再生加工品には、ペットボトル、パレットや鉄道標識、食品用のトレーなどがあります。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に分解するなど、プラスチック以外の物質に変化させるリサイクルです。ケミカルリサイクルにはいくつか技術があり、油化、ガス化、コークス炉化学原料化、高炉原料化、原料・モノマー化などがあります。具体例としては「ボトルtoボトル」が挙げられます。以前は、使用済みペットボトルは衛生面や臭いの面から容器への再利用には適さず、繊維やシートへのリサイクルが行われていました。しかし、新たなペットボトルを作る際、使用済みペットボトルを中間原料まで戻すことができれば、原料から合成するよりも天然資源の節約が図れ、衛生面などの課題も解決できると考えられています。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、ゴミとして回収された廃プラスチックを埋め立てや単純焼却を行うのではなく、ゴミ焼却の熱利用・ゴミ焼却からの発電または固形燃料として利用するリサイクルとなります。
かつて、廃プラスチックは「不燃ゴミ」として埋め立てをされていました。しかし、2005年に環境省から「廃プラスチック類の取扱いについては、まず発生抑制を、次に容器包装リサイクル法等により広がりつつある再生利用を推進し、それでもなお残った廃プラスチック類については、最近の熱回収技術や排ガス処理技術の進展、最終処分場のひっ迫状況等を踏まえ、直接埋立は行わず、一定以上の熱回収率を確保しつつ熱回収を行うことが適当である。」*1という基本方針が示されました。以降、リサイクルが困難なプラスチックについてはサーマルリサイクルが行われています。
*1 引用:廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための 基本的な方針(改正 平成 17 年 5 月 26 日 環境省告示第 43 号)
日本におけるプラスチックリサイクル率
前述のように国内のプラスチックリサイクル方法には大きく分けて3つあり、国内においてプラスチックの有効利用率は86%です(2020年時点)*2。その内訳としては、マテリアルリサイクルが21%、ケミカルリサイクルが3%、サーマルリサイクルが62%となっています。これらのリサイクル方法は国際規格によると、マテリアルリサイクルは「Mechanical Recycle」、ケミカルリサイクルは「Feedstock Recycle」となります。しかしサーマルリサイクルは「Energy Recovery」の位置づけとなりリサイクルには含まれません。そのため欧米の基準からするとから日本のプラスチックリサイクル率は高くないと見られていました。
そこで環境省から2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」が発表されました。内容としては、3R(リデュース・リユース・リサイクル)とRenewableを重点戦略とするものです。国内でもサーマルリサイクル以外のリサイクル方法に注力がされています。
(詳しくはコラム「プラスチック資源循環戦略とは?」参照)
まとめ
日本では、これまで廃プラスチックに対して3つのリサイクルを行ってきました。品目や状態によって適しているリサイクルが行われて、私たちの生活の中にも再生品が流通されています。
プラスチックは私たちの生活の中で必要不可欠な物です。利用が終わったプラスチックを単純焼却や埋め立てを行うことせず、適切なリサイクル処理を行うことが循環型社会を実現させるための一歩となるのではないでしょうか。
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