ESG投資とは?
2021/11/15
2021/11/17
- SDGs
- 経営管理
はじめに
「SDGs」や「脱炭素」、「循環型経済」など、環境に関わるキーワードを様々なメディアで目にすることが増えてきました。伝統的に投資家は企業の財務情報に基づき投資判断をしていました。その後社会の変化を受け、投資先の判断基準に、社会的責任投資(SRI、Socially Responsible Investment)という考え方が加えられてきました。社会的責任投資は、財務情報だけでなく、企業の社会的責任に基づき持続可能な社会形成へポジティブな影響を与えているかどうかを考慮し、投資先を選択する考え方になります。そして現在は、社会的責任投資をさらに発展させESG(Environment、Social、Governance)を考慮し投資が行われています。
内容
2006年、国際連合からPRI(責任投資原則、Principles for Responsible Investment)が発表されました。これは当時、国連事務総長だったコフィ・アナン氏が提唱しました。アナン氏は「金融は世界経済の原動力となっているものの、投資判断には環境・社会・ガバナンスの視点、言い換えれば持続可能な発展の原則が、十分に反映されていない」という認識のもとPRIを提唱しました。PRIは「責任投資6原則」で構成されており、ESGの観点から投資先の分析や意思決定を行う考え方です。
(出典:経済産業省 ESG投資とは)
また、2008年のリーマンショック以降、短期的な利益追求に対する批判が世界的に高まりました。それを契機に世界の投資家の考え方は長期的に安定的なリターンを重視するようになりました。ESG投資は元々長期的な投資を前提としています。リーマンショックを契機に世界中の機関投資家がESGの視点を含んでいるPRIに署名を行いました。世界では約3,000以上の機関投資家がこのPRIに署名をしています。(2020年時点)
ESG投資の手法はいくつかありますが、代表的な手法を2つご紹介します。
①ESGインテグレーション
これまでの「財務情報」に基づく投資判断に加えて、環境や社会問題への対応など企業のESGに関する取り組みを「非財務情報」として組み入れ、総合的に企業を評価する手法です。
②ネガティブスクリーニング
特定の業界を投資対象から除外する手法です。例えば武器製造、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電などの業界を投資先から排除する動きです。
投資の世界では、ESGに取り組む企業がより評価され、取り組んでいない・環境に対してネガティブな影響を与える企業は投資先から排除される潮流があります。
日本でのESG投資
日本でも98の投資機関がPRIに署名をしています(2021年8月13日時点)。日本の投資機関の中でも話題となったのが、2015年9月にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名したことです。GPIFは世界最大の運用資産額を持つ年金基金です。GPIFはPRIへ署名したことに伴い2017年10月に投資原則を改めました。新たな投資原則では株式だけでなく債権など全ての資産をESGの要素を考慮して投資する方針が示されています。ESGを考慮することにより市場全体の持続的な成長と、長期的な投資収益の拡大を目指しています。
2020年、世界のESG投資総額は35兆3千億ドルに達しました。その中で日本のESG投資総額は2兆874億ドルであり、欧州の12兆170億ドルや米国17兆810億ドルと、諸外国に比べESGに関してはまだまだ発展の余地が残っています。
まとめ
世界的にも、日本国内的にも、環境問題への意識は日に日に高まっています。投資家の間ではSRIという考え方に加えPRIが提唱され、ESG投資が進められています。環境問題に対して消極的な企業は投資先から排除される一方、SDGsや脱炭素などの環境問題に対して積極的に取り組んでいる企業は世界中から投資を受けられる可能性があります。また投資家も短期的な収益獲得ではなく、長期的な投資による利益拡大へと方針を変えています。企業として環境問題に取り組むことは、ブランド力を上げるだけでなく、長期的な投資を受けることができ、私たちの暮らす地球を守る活動にも繋げることができます。