投資の判断となり得るTCFDとは?
2021/10/05
2021/12/24
- 経営管理
- カーボンニュートラル
はじめに
「TCFD」とは気候関連のリスクと機会について情報開示をする企業への支援をするための組織です。一見すると地球環境への配慮や持続可能な社会のためという目的を感じますが、この提言に至るには金融面での強い重要性がありました。
2015年パリ協定により各国は温室効果ガス削減の目標を設定しました。そのため、温室効果ガスの排出の一因である化石燃料については、その利用そのものに大きく見直しが図られ、その結果、投資家たちによる化石燃料関連からの投資撤退の動きが顕著に表れるようになります。
G20においてはその動きに危機感を感じ、投資家への新たな投資判断を促すために、金融安定理事会(FSB)へその検討を要請した結果、2016年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が設立されました。
内容
「TCFD」が情報開示を求める、“気候関連のリスク”とは
・激しい風雨や洪水、または、気温上昇による健康被害等の直接的な影響
・企業が提供する製品・サービスが低炭素化社会へとうまく対応できず、
社会からの評価が低下してしまう等の間接的な影響
であり、それらリスクに対して企業としてどのように貢献・適応し、企業の価値を向上させるかが“機会”に関する情報となります。
「TCFD」は2017年6月に、企業に対しての情報開示の支援を行い、低炭素社会へと移行するための金融市場の安定化を図ることを目的として最終報告書を公表しました。
最終報告書では、企業に対して大きく4つの項目について情報開示を求めています。
①ガバナンス:企業がどのような体制で検討し、どのような方法で企業経営に反映しているか。
②戦 略:短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。
③リスク管理:気候関連のリスクを特定・評価するための方法。また、低減するための方策。
④指標と目標:リスクと機会の評価をするための指標は何か。また、目標への進捗度を
どのように評価しているか。
では、企業としては具体的にどのように進めればよろしいのでしょうか?
進め方
日本国内では具体的に取り組むためのガイダンスが各所から公開されております。
例)気候関連財務情報開示 に関するガイダンス 2.0(TCFDコンソーシアム)
例えばこのガイダンスによると、公開する媒体や、開示が求められている4つの項目について推奨される、具体的な内容や業種別の開示推奨事項が掲載されています。まずはそのガイダンスに沿って、自社の情報の洗い出しをすることが取り組みを進めるための第一歩になるのではないでしょうか?
現在、TCFDではその趣旨に賛同する機関等を公表しており、日本では475の企業・機関が賛同の意を示しております
(出典:TCFDコンソーシアム)
これまでの気候関連に対する企業の価値観は、「企業の社会的責任だから行わなければならない」という認識でしたが、今後は、もっと事業そのものと寄り添い、企業が損害を被るリスクを特定しておくもの、あるいは新たな事業活動を行うための機会を見出すための必要な要素になるのではないでしょうか。
まとめ
TCFDとは脱炭素社会に向けた社会や投資家の変化を背景として、G20が要請し、金融安定理事会(FSB)が設立した、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の事です。気候関連のリスクと機会について情報開示を行う企業を支援し、投資家が適切な投資判断をすることで、低炭素社会へと移行させ、自然災害等による突発的な損失を起こすことなく、金融市場を安定化させることを目的としております。
企業が取り組む第一歩としてはガイダンスを参考にした自社の情報の洗い出しです。ガイダンスには、自社の事業にどのような気候関連へのリスクが孕んでいるか、他企業の公開事例等もありますので参考にしながら取り組んでみて下さい。