【食品業界】サーキュラーエコノミーの推進事例を紹介
2024/01/05
2024/3/16
- 循環型社会
各業界でサーキュラーエコノミー推進の機運が高まっていますが、それは食品業界も例外ではありません。
本記事では食品業界におけるサーキュラーエコノミーの取り組み事例を6社紹介します。
ポイントも解説しているため、自社での取り組みを考えられている企業担当者様は、ぜひご覧ください。
食品業界が直面する世界的な問題
はじめに、食品業界が今日直面している世界的な課題を3つ紹介します。
フードロス
フードロス(食品廃棄)は、看過できない国際的な問題です。
世界では今、年間13億トンもの食糧が廃棄されているという事実を聞いて、どう感じられるでしょうか。
生産量に対する廃棄量の割合は、実に30%にも上ります。
日本においてもフードロスの問題は深刻であり、国民全員が、毎日茶碗1杯の食品を廃棄している計算になります。
これは、なにも個人の食品に対する意識の問題だけではありません。
食品業界特有の「1/3ルール」も、日本国内のフードロスを助長させていると言えます。
「1/3ルール」とは、賞味期限が十分に確保された商品を店頭に並べるために策定されたルールです。
このルールでは、食品の製造日から賞味期限までの期間を3分割したうえで、最初の1/3の期間を納品期限、次の1/3を販売期限と定めています。
納品期限までに卸が小売りに納入できなかった商品は卸からメーカーへ、販売期限までに小売りが消費者に販売できなかった商品は小売りから卸に返品されます。
つまり、この厳格すぎるルールに従った結果、まだ品質に問題ない大量の食糧が、やむなく自動的に廃棄されてしまうのです。
これは日本だけの問題ではなく、世界の国々が等しく抱えている問題です。
フードロスにより食品は無駄になるだけではなく、廃棄の際にエネルギーを消費したり、温室効果ガスを発生させたりするので、副次的にもより大きな問題の原因ともなっています。
フードロスを解決するためには、個人・企業の食品に対する意識改革はもちろん、保存技術の革新や、効率的な生産・販売体制の構築といった多角的なアプローチが求められます。
国による食糧自給率のバラつき
自国における食糧の生産能力と、消費量のバランスが悪い国は少なくありません。
我が国日本も例外ではなく、食糧自給率は40%弱程度です。
言い換えれば残りの60%を輸入食品に頼っているということです。
世界情勢や、災害等によって食糧輸入がストップした場合、特に日本のような国土面積の狭い島国は深刻な危機に直面するでしょう。
日本に限らず、自国での食糧自給率を上げていく試みが、食糧問題の解決につながるのは言うまでもありません。
これを実現するためには、食糧生産技術の革新にくわえ、消費者側も「地産地消」を意識しながら、農家支援の行動や食べ残しを減らす取り組みが望まれます。
包装素材による環境負荷
食品の包装容器には、大量のプラスチックが使われています。
年間約4億トン生産されているプラスチックのうち、実に1/3以上が食品包装に加工されます。
プラスチックは軽量であり、食品の品質を維持するうえで優れており、くわえて安価なため、食品業界においてはなくてはならない素材です。
しかし、これらの包装は食品の消費とともに廃棄され、焼却時には有害ガスを発生させて環境汚染を誘発します。
現状、食品包装材としてプラスチックに代替しうるだけの素材は開発されておらず、このことは大きな課題です。
次世代の素材の開発や、容器の再利用・再生といった取り組みが求められます。
食品業界とサーキュラーエコノミー
持続可能な経済・社会システムを目指すサーキュラーエコノミーは、官民連携により、世界的に推進の波が広がっています。
環境に優しく、循環型の経済を目指すサーキュラーエコノミーは、フードロスをはじめとした、諸問題を抱える食品業界との親和性は高いといえるでしょう。
食品業界の企業にとっての利点は、サーキュラーエコノミーの推進によるコストカットや、ブランドイメージの向上を図れるといったものなどです。
サーキュラーエコノミーの推進により企業が得るメリット
では、食品業界の企業が、サーキュラーエコノミーを推進するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、食品業界の企業がサーキュラーエコノミー推進で享受できる、具体的なメリットを3つ紹介します。
メリット➀フードロスに対するソリューションとなる
サーキュラーエコノミーへの取り組みは、食品の廃棄という問題解決への切り札です。
食品の品質管理技術や安全検査技術、物流管理、包装技術、保存技術といったテクノロジーと、管理体制の刷新によって食品の寿命が延びれば、廃棄される食品も減ります。
また、仮に余剰分が発生したとしても、それを再利用する技術が確立されれば、フードロスは限りなくゼロに近づきます。
メリット②コストカットを図れる
食品を効率的に生産でき、同時に廃棄によるムダを無くすことができればコストの削減につながります。
先述したように、我が国の食品業界では「1/3ルール」によって、廃棄が前提となった食糧生産体制が敷かれていると言っても過言ではありません。
しかし、サーキュラーエコノミーの推進によって、フードロスを減らせれば、コスト面での無駄も省くことができるというわけです。
メリット③企業・ブランドイメージの向上につながる
サーキュラーエコノミーの取り組みが周知されれば、企業・ブランドイメージも向上するでしょう。
フードロスをはじめとした食品業界が抱える課題には、世界が注目しています。
食品に対する消費者の意識も変わりつつある今、食糧問題解決へのアプローチにもなるサーキュラーエコノミーの推進によって、企業は社会的な評価を得られるのです。
【食品業界】サーキュラーエコノミーへの取り組み事例
ここからは、食品業界におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み事例を、6社紹介します。
なお、弊社の取り組みに関しては、次の段落で紹介します。
FARM CANNING
FARM CANNINGは、野菜をベースにしたソースやディップを製造する企業です。
有機栽培など、SDGsに取り組む農家より仕入れた、一般には流通させられない規格外の野菜を原料に商品を作っています。
バーニャカウダソースや季節野菜を使ったジェノベーゼなどを、すべて手作りで製造しています。
本来であれば廃棄されるはずの原材料を有効活用した、サーキュラーエコノミーの実例です。
参照元:FARM CANNING
HenoHeno
HenoHenoは、デイブレイク株式会社が手掛けるナチュラルフローズンフルーツのブランドです。
これまでは、ジュースに加工されていた規格外の果物を、特殊な冷凍技術により、フローズンフルーツとして流通させることに成功しています。
解凍せずに、そのまま果物の味わいを楽しめるのもあって、大きな話題をよびました。
規格外の食材の有効活用のみならず、冷凍技術によって食品寿命の延長を図り、フードロス削減に大きく貢献したサーキュラーエコノミーの一例です。
参照元:HenoHeno
株式会社4Nature
株式会社4Natureでは、サトウキビストローを製造・販売しています。
このストローは、従来は産業廃棄物として処理していた、サトウキビから出る残渣を主原料に製造されています。
今後は、サトウキビストローの使用後に堆肥化するシステム設計も進行中です。
食品製造で発生する廃棄物を抑制しつつ、再生可能な素材を開発したサーキュラーエコノミーの取り組み例です。
参照元:株式会社4Nature
Loop Japan
食品の流通や、容器の再利用に革命を起こした例として、Loop Japanの取り組みが挙げられます。
Loop Japanは「捨てるという概念を捨てる」というミッションのもと、メーカー等と協業しながら進められているリユースプラットフォームです。
具体的には、耐久性があり、リユース可能な食品容器を使用したうえで、使用済み容器の回収・再利用の仕組みづくりを構築しています。
2020年には日本にも上陸しており、すでに20社以上がパートナーとして参加中です。
従来は廃棄されていた大量の食品容器・包装の再利用という、食品業界におけるサーキュラーエコノミーを推進するうえで欠かせないソリューションを確立した事例です。
参照元:Loop Japan
産地直送あいのり便
「産地直送あいのり便」は、株式会社アップクオリティにより提供される、食品流通サービスです。
同サービスでは、高速バスの空きトランクを活用して、全国の野菜や鮮魚、精肉を消費者に直送します。
消費者へのリーズナブルな食材提供と、食品の流通における効率化を両立したサーキュラーエコノミーの好例の一つです。
参照元:産地直送あいのり便
ウェスティン都ホテル京都
ウェスティン都ホテル京都では、京都府立農芸高校と協力して、食に関するSDGsプロジェクトである「#たべるめぐるホテル」を2021年から展開しています。
この取り組みでは、ホテル内のレストランから出た生ごみの一部を堆肥化したうえで、ハーブ等を育て、それをホテル内のレストラン・バーで提供しています。
食品廃棄物の再利用と循環という観点で、ひいては食糧自給率の向上という側面でも注目したいサーキュラーエコノミーの事例です。
参照元:ウェスティン都ホテル京都
食品業界でサーキュラーエコノミーを行う際のポイント
最後に、食品業界においてサーキュラーエコノミーを推進するうえで、押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
ポイント➀食品の廃棄量削減を主眼に置く
サーキュラーエコノミーは、廃棄を出さないことが大前提となります。
特にフードロスが問題視される食品業界においては、食糧廃棄をゼロにするのが、最優先課題と言えます。
ポイント②地産地消をめざす
地産地消の推進も重要です。
生産者と消費者の距離を近づけられれば、輸送コストや環境負荷を低減できます。
もちろん、生産者としても新鮮な食材を安く購入できるので、双方に利益がある理想的な食品流通のカタチと言えるのです。
ポイント③素材へ配慮する
食材の、堆肥としての再利用を視野に入れているのであれば、その成分などへの配慮も必要です。
たとえば、食品に化学調味料や着色料が多用されていると、肥料化された際に、土壌への影響もないとは言えません。
このように、循環型の食品生産のあり方を考えるうえでは、生産時から素材へ注意を払っておくことが重要なのです。
ポイント④パッケージの所有権を移動させない
先述したLoop Japanの事例のように、パッケージの所有権を消費者に譲渡しないというのもポイントです。
これにより企業側が食品の容器・包装の回収・再利用のプロセスをスムーズに進めることが可能になります。
食品業界におけるサーキュラーエコノミー推進時には、廃棄削減を最優先に!
いかがでしたでしょうか。
今回は、食品業界を取り巻く諸問題と、解決の糸口としてのサーキュラーエコノミーを紹介しました。
食品業界には、フードロスや食糧自給率の低さといった問題が山積しています。
企業は、サーキュラーエコノミーの推進により、食品の廃棄量を削減しつつ、コストカットや企業・ブランドイメージの向上を図ることが可能です。
食材の有効活用や再利用、地産地消の流通モデルなど、多くの食品関連企業が取り組みを行っています。
JEMSでは、企業のサーキュラーエコノミーへの取り組みに貢献するソリューションを提供しています。
Circular Naviは、企業のサプライチェーンのトレーサビリティーや再資源化率の可視化などによって、製品ごとに環境価値を提示することができます。
ぜひ、Circular Naviをご活用ください。