エネルギー自給率向上の足掛かり「エネルギーの地産地消」について
2022/05/09
2024/1/9
- SDGs
- 再生可能エネルギー
- カーボンニュートラル
はじめに
「エネルギーの地産地消」とは、分散型エネルギー社会の実現のために地域の特徴を活かして再生可能エネルギーなどを最適に活用することで、エネルギー供給のリスク分散やCO2の排出削減を図ろうとする取り組みです。
内容
日本は世界的に見てエネルギー自給率が非常に低い国です。2010年のエネルギー自給率は20.8%と決して高い数値ではないものの、原子力発電所を稼働させることである程度の数値を保つことができていました。しかし、2011年の東日本大震災発生が起因となり、原子力発電所が停止されて化石燃料を利用した火力発電に頼らざるを得ない状況となりました。
日本は化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、2018年には日本のエネルギー自給率が11.8%まで下がりました。これはOECD(経済協力開発機構)の加盟国38カ国中34位でかなり低水準です。エネルギー自給率が低いと、海外の情勢の影響を大きく受けてしまいます。最近では世界情勢の混乱の影響で原油を始めとした化石燃料の価格が高騰し、私たちの生活にも大きな影響が出ています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 「日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
また、日本は台風や地震などの自然災害が多く発生する国です。現在、エネルギーの供給方法としては、主要電力会社の大規模集中設備によって発電されて全国に送電されていますが、その発電設備が止まってしまった場合に大規模な停電が起きる可能性があります。東日本大震災が発生した際には電力不足が生じたため計画停電が行われましたが、最近でも、地震の影響で関東の発電設備が停止してしまい、危うく大規模停電が起こる可能性がありました。
これらのエネルギーに関する問題に対し、政府からエネルギー基本計画が発表されています。エネルギー基本計画では、化石燃料に頼らず再生可能エネルギーを利用した発電設備を地域内に置く「エネルギーの地産地消」が推奨されています。このエネルギーの地産地消には次の3つのメリットがあります。
1.災害時でもエネルギーの安定供給ができること。発電設備が複数ヶ所にあるため
1ヶ所が災害の被害を受けても他の地域で影響を防ぐことができます。
2.地域に根差した事業活動であるため、支払った料金は地域内で循環され新たな事業者が地域
で活動を行うため雇用を生むこと。
3.地域内へのエネルギー供給がメインとなるので、大規模な発電設備は必要なく再生可能エネルギー
での発電で賄うことが可能となること。これは日本が2050年までに達成を宣言している
カーボンニュートラルにも寄与します。
事例
2つの地域で行われている「エネルギーの地産地消」の事例を紹介します。
東京都武蔵野市
旧クリーンセンターの老朽化が進み、2007年に「武蔵野クリーンセンター施設基本構想」が策定されて建て替えが決定しました。また、2011年の東日本大震災を契機に災害に強い施設を作る必要性の高まりを受け、ゴミ由来の熱や電気を周辺公共施設へ供給できる仕組みを組み込み2018年より供給を開始しています。
出典:経済産業省 関東経済産業局
「エネルギー地産地消等の実装化事例における「検討段階で直面した課題」と「課題克服のポイント」を紹介します」
千葉県銚子市
銚子市では自治体、民間企業、金融機関が共同出資を行い、地域新電力会社「銚子電力」を設立しました。「銚子電力」は出資者に対する配当は行わず、利益の全てを地域貢献サービスなどを通じて地元へ還元するスキームとなっています。「銚子電力」では消費者への電力サービスのほかに、銚子電鉄への支援や特産品の送付など様々サービスを提供しています。
出典:経済産業省 関東経済産業局
「エネルギー地産地消等の実装化事例における「検討段階で直面した課題」と「課題克服のポイント」を紹介します」
― 地域新電力
まとめ
日本においてエネルギー自給率を向上させることは、安定的な経済活動を続ける上で必要不可欠です。しかし、化石燃料がほとんど無い中、海外からの輸入に頼らずに実現するには、再生可能エネルギーの活用を増加させる必要があります。直ちに全国のエネルギーを再生可能エネルギーへ代替することは難しいですが、まずは小規模の地域から始めることで少しずつでも自給率を上げることにつながります。「エネルギーの地産地消」の推進には地域ごとに様々な課題がありますが、ほかの地域の事例から課題解決の糸口を見つけることができるかもしれません。
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。