次世代のエネルギー“アンモニア”とは
2022/03/28
2022/3/28
- カーボンニュートラル
はじめに
2020年10月、菅総理(当時)は臨時国会で「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。約半年後の2021年4月の気候サミットにおいて、日本政府は「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること」を目標として発表し、脱炭素社会へのパラダイムシフトの決意を示しました。
日本の温室効果ガスの約9割はCO2であり、そのうちの約4割は電力部門から排出されています。よって、カーボンニュートラルを実現するためには、電力部門におけるCO2の削減が鍵となります。なかでも、発電におけるCO2の削減手段としてアンモニアの活用が近年注目されています。
アンモニアってなに?
アンモニアは、窒素と水素の化合物で化学式はNH3です。常温常圧では無色、強い刺激のある気体であり、加圧や冷却により比較的簡単に液化できます。また水にもよく溶けてアンモニア水となります。
アンモニアは毒性があり、液化アンモニアは空気や強酸と混合すると爆発するなどの危険性もあり、私達は日常生活の中で直接接触することはほとんどありませんが、農業に欠かせない肥料として広く利用されています。また、衣料品や建材などに使われるナイロンも、アンモニアを原料として作られています。このように、アンモニアは既に陰で私たちの暮らしを支えています。
注目されているアンモニアの新しい用途とは?
一つ目は、「エネルギーキャリア」としての利用です。近年、グリーンエネルギーである水素による発電は世界中から注目を集めていますが、体積当たりのエネルギー密度が低い(天然ガスの1/3程度)ため、大量輸送・貯蔵が課題とされています。
そこで、「エネルギーキャリア」すなわち輸送媒体としてアンモニアが登場します。水素を体積当たりのエネルギー密度が大きいアンモニアに変換して輸送し、燃料として利用する際に再び水素に戻すという方法が考案されています。
また、アンモニアは既に様々な領域で広く利用されており、安全に運搬、貯蔵、利用する技術やインフラが備わっているため、初期投資を抑えて早期の社会実装が可能な点について大きな優位性があると考えられます。
二つ目は、燃料としての利用です。アンモニアは窒素と水素の化合物であり、燃焼してもCO2が生成しないため、カーボンフリーな燃料としての利用も考案されています。
現在では、石炭ボイラーにアンモニアを混ぜて燃焼する、またはアンモニア100%で専焼する技術の開発および実証が進んでおり、経済産業省の「燃料アンモニア導入官民協議会中間取りまとめ」の資料によると、石炭火力にアンモニアを20%で混焼することで、CO2の排出は20%抑制され、国内の大手電力会社の石炭火力発電をすべてアンモニア専焼に切り替えればCO2排出量は約2億トンの削減になり、現在の日本の電力部門のCO2排出量を半減できます。
おわりに
次世代エネルギーとしてのアンモニアの利用については、まだいくつか課題が存在しており、実用に向けて様々な研究および実験が行われています。近い将来には、石炭火力発電に替わる発電手段として水素やアンモニアの活用が進むことにより、電力部門の脱炭素化の促進につながることが期待されています。
参照:経済産業省「経済燃料アンモニア導入官民協議会中間取りまとめ」