地球温暖化対策の最後の砦! CO2を回収して有効利用する取り組みについて
2021/12/13
2024/1/9
- 脱炭素
- Co2回収
- Co2有効利用
はじめに
気候変動の脅威に対応するため、パリ協定では気温上昇を2°C未満に抑える(理想的には1.5°C未満)という目標を掲げています。世界的に危機感の共有が進み、私たちの日常生活の中でも地球温暖化対策や、脱炭素などの言葉が使われるようになってきました。
特に、地球温暖化の主要因である“二酸化炭素(CO2)”の削減は、重要な課題となっています。CO2削減のため、再生エネルギーの利活用や省エネルギー商品の開発、化石燃料から電気へのエネルギー転換などの技術開発が進んできました。太陽光発電や水力発電、水素で動く路線バスや電気自動車、IoTセンシング技術を活用した物流のスマート化なども、脱炭素への取り組みとして注目されています。
また、CO2削減の取り組みと合わせて地球温暖化対策の砦と言われるCO2を回収・保存する技術や、CO2を有効利用するための技術の研究も始まっています。
「CCS」「CCU」「CCUS」とは
CO2を回収し、長期に保存または有効利用する技術は、英字の頭文字から「CCS」「CCU」「CCUS」と呼ばれています。
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)
「CCS」は「二酸化炭素回収・貯留」技術を指します。まず、発電所や化学工場などから排出されたCO2を特殊な溶液(アミン溶液)で吸収させて回収します。回収されたCO2は地下800メートルより深くにある砂岩等からなる「貯留層」へ圧入することで長期貯留を行います。日本ではCO2を貯留できそうな場所が海域に多くあり、火力発電所に代表される大規模なCO2排出源となる施設も沿岸部に多いこともあって、海底への貯留が適していると考えられています。
ただ、「CCS」はあくまで気候変動対策として大気中に放出されるCO2を削減するという目的のために技術開発されており、この取り組みだけでは収益が見込まれず、次の「CCU」の取り組みなども併せて検討する必要がある技術です。
CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)
「CCU」は「CO2の有効利用」技術を指します。資源としてCO2を有効利用する方法には、大きく分けて2つあります。1つは「メタンガスなどの燃料に変換して利用する方法」であり、もう1つは「CO2をそのまま直接利用する方法」です。
「メタンガスなどの燃料に変換して利用する方法」は、CO2に水素ガスなどを反応させて、メタンガスを精製する技術です。ただし、CO2が元々安定したガスであることから、反応を起こすプロセスと、反応させる水素を精製するプロセスの両方で、かなりのエネルギーが必要となるため、再生可能エネルギーを活用してできるだけ化石燃料を使わない方法が研究されています。
「CO2をそのまま直接利用する方法」では、ドライアイスでの利用や農業利用などが検討されています。例えば、農業利用に関しては、CO2の濃度が上昇すると光合成の速度が増加し、果実の生産も進むという調査結果も出ており注目されています。
CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
「CCUS」は分離・貯留したCO2を有効利用するもので、「CCS」と「CCU」が合わさった言葉です。「CCS」や「CCU」だけでは、ビジネスとして収益化が難しいため、回収・貯蔵したCO2を有効利用する「CCUS」という考え方が広く進んできています。
例えば米国では、CO2を油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するという「CCUS」が行われています。
日本における取り組み
日本では、2012年から北海道・苫小牧でCCSの大規模な実証実験が行われています。製油所から供給されたガスの中からCO2とそれ以外の気体を分離し、海底深くに掘った井戸に、30万トン規模のCO2を埋め込みました。無事に埋め込みが完了し、現在はCO2漏洩検知のモニタリング調査が行われています。
また、岩手県ではCCUのモデル事業として、廃棄物焼却施設から排出されたCO2に水素を反応させて、エタノール化する事業が2021年から始まっています。
まとめ
廃棄物の分野において、3R(リデュース:抑制、リユース:再使用、リサイクル:再生利用)が広く浸透し、各企業や個人の方々が率先して取り組んできたことで、埋立処分していた廃棄物の量を減らしてきた過去があります。特に、廃棄物になってしまったものを、もう一度ループさせるリサイクル技術は、循環型社会において非常に重要な位置づけになっています。
脱炭素社会においても、CO2の排出を抑える技術と共に、排出されてしまったCO2を回収しカーボンリサイクル(有効利用)する方法も、重要な役割を担うことが期待されます。今後の脱炭素に向けた各国や各企業の技術開発に注力したいですね。
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。