サステナビリティとは?メリットや取り組み事例を紹介
2020/09/07
2024/9/3
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ビジネスシーンや日常生活を問わず、“サステナビリティ”という言葉を耳にするようになりました。
地球温暖化や海洋汚染など、さまざまな環境問題が深刻化するなか、サステナビリティの重要性は増すばかりです。
そこで本記事では、サステナビリティの概要や、重要視される背景を詳しくお伝えします。
企業の取り組み事例も併せて紹介するので、社を挙げて環境問題に取り組みたいとお考えの担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。
サステナビリティとは
サステナビリティ(sustainability)とは、環境や社会、経済に配慮した活動を行うことで、社会全体を持続可能な状態に導くための考え方のことです。
“sustain(持続する・維持する)”と“able(〜できる)”を組み合わせた造語であり、日本語では“持続可能性”といわれています。
1987年に“環境と開発に関する世界委員会”が発表した報告書にて、“Sustainable Development(持続可能な開発)”という言葉が使われたことをきっかけに、広く知れ渡りました。
なお、もともとは環境保護の文脈で用いられる言葉でしたが、近年では、企業が果たすべき社会的責任と紐づけられるケースも増えています。
企業には、利益の追求だけでなく、持続可能な発展を目指す活動が求められているのです。
サステナビリティの3つの柱
サステナビリティにおいては、持続可能な発展を目指すための“3つの柱(観点)”に基づいた取り組みが重要です。
【サステナビリティにおける3つの柱(観点)】
- 環境保護(Environmental Protection)
- 経済発展(Economic Development)
- 社会開発(Social Development)
環境保護の分野では、経済活動に伴って生じる環境への負荷を軽減し、地球上の自然を守ることが求められています。
具体的には、森林の保存や水資源の節約、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が挙げられます。
経済開発は、社会全体で長期的にパフォーマンスを維持し、利益を出し続けることを求める柱です。
利益の追求だけでなく、労働環境の整備や社会保障の拡充、貧困問題への対応も含まれます。
社会開発においては、貧困や人種、ジェンダーなどによる差別のない平等な社会環境の実現を目指します。
各国の文化を尊重しつつ、社会サービスの改善や平等な教育の提供、多様性のある働き方の推進が必要です。
SDGs・CSRとの違い
サステナビリティと混同されがちな用語として、“SDGs”と“CSR”が挙げられます。
これらの用語の違いや、その意味を正しく理解しておきましょう。
【サステナビリティ・SDGs・CSRの違い】
サステナビリティ | 持続可能な発展を目指す考え方 |
SDGs | 2030年までに達成すべき持続可能な開発目標 |
CSR | 企業の社会的責任 |
SDGsは、“Sustainable Development Goals”の略称であり、“持続可能な開発目標”と訳されます。
2015年に開催された国連サミットにおいて、全会一致で採択された、2030年までに達成すべき世界共通の目標です。
その内容は、環境・経済・社会に関する17の目標によって構成されています。
サステナビリティは持続可能な発展を目指す考え方であり、その具体的な目標を定めたのがSDGsというわけです。
一方、CSRは“Corporate Social Responsibility”の頭文字をとった用語で、“企業の社会的責任”を意味します。
企業活動に対して、環境や次世代への配慮を実践し、利害関係のある顧客や従業員、株主や地域社会に対して責任ある行動を求める考え方です。
サステナビリティと似た概念ではありますが、CSRの対象は、企業に限られます。
サステナビリティのガイドライン(指標)
企業がサステナビリティを推進するにあたって、基準にすべきガイドラインや指標があります。
本項では、サステナビリティを推し量るための、代表的なガイドラインと指標を紹介します。
ガイドラインと指標①GRIスタンダード
GRIスタンダードは、オランダのアムステルダムに本部を置くGRI(Global Reporting Initiative)が作成した枠組みです。
環境・経済・社会に与える影響や貢献度を可視化し、企業の透明性と説明責任を果たす際に有効です。
国際ガイドラインの一つであり、世界中の企業がサステナビリティに関する報告書を作成する際に使用されます。
情報開示の対象者には、投資家だけでなく、従業員やサプライヤー、地域社会など幅広い範囲のステークホルダーが含まれています。
ガイドラインと指標②DJSI
DJSI(The Dow Jones Sustainability Indices)とは、1999年にS&P Dow Jones Indices社と、RobecoSAM社が共同開発した、投資家向けのインデックス(指数)のことです。
ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、世界の主要企業のサステナビリティ(持続可能性)を評価し、総合的に優れた企業をDJSI銘柄として選定しています。
DJSIは、ESGへの取り組みを評価する“ESGインデックス”のなかでも歴史が長く、知名度の高い指標です。
そのため、サステナビリティに注力する企業にとって、DJSI銘柄に選定されることは、大変な名誉というわけです。
サステナビリティに優れた企業を示す指標として、DJSIは参考にすべきでしょう。
サステナビリティが重要視される背景
近年、サステナビリティが重要視されている背景には、以下のような要因があると考えられます。
【サステナビリティが重要視される背景】
- 環境問題の深刻化
- 国連サミットでのSDGsの採択
- 消費者のニーズの変化
- 投資家の投資に対する判断基準の変化
経済活動が発展するとともに、廃棄物や温室効果ガスの排出量が増大しています。
それらは、地球温暖化や海洋汚染、気候変動や資源の枯渇といった環境問題を深刻化させており、改善が急務であることは明白です。
そのようななか、2015年に開催された国際サミットにて、SDGsが採択されたことが話題になりました。
SDGsの目標では、環境・貧困・飢餓・ジェンダーなどの問題が挙げられています。
これらの目標は、サステナビリティの観点と密接に関わっており、結果的にサステナビリティの重要性が広く知られることとなったのです。
近年では、消費者や投資家の意識も変わりつつあります。
商品を購入するにあたって“環境への配慮”が、購買動機の一つとなり、また、企業のサステナビリティの活動実績が投資の判断基準になっています。
サステナビリティは、今や、世界の潮流と言っても過言ではないでしょう。
企業がサステナビリティに取り組むメリット
多方面から注目を集めるサステナビリティですが、企業が取り組むことでどのようなメリットを享受できるのでしょうか。
【企業がサステナビリティに取り組むメリット】
- 企業価値の向上
- 事業の拡大
- 従業員のエンゲージメント向上
一つずつ、詳しく見てみましょう。
メリット①企業価値の向上
サステナビリティへの取り組みは、企業価値の向上につながります。
前述した通り、消費者や投資家のサステナビリティに対する関心は高まっており、環境問題や社会問題に取り組む企業の姿勢が重要視されています。
つまり、率先してサステナビリティの活動に取り組むことで、企業のイメージ向上が図れるわけです。
その結果、売上の向上やリピーターの獲得、取引先の拡大といったメリットにもつながるでしょう。
昨今では、DJSIをはじめとする、ESGインデックスへの投資がトレンドとなっています。
サステナビリティへの取り組みが投資判断の基準となっており、資金調達の側面でも、有利に働く可能性が十分にあり得ます。
メリット②事業の拡大
サステナビリティの活動に取り組むことで、新たな事業の創出や、市場開拓につながると期待されています。
2017年に“ビジネスと持続可能な開発委員会”が発表した報告書には、「グローバル目標を達成することで12兆ドルの機会創出になる」と記載されています。
それほどまでに、サステナビリティに関連する事業の拡大が期待されているわけです。
サステナビリティの活動をきっかけに、新たな技術力や、企業同士のつながりが生まれ、今まで想像もしなかったような発展を遂げる企業が現れるかもしれません。
メリット③従業員のエンゲージメント向上
サステナビリティの実現に取り組む企業は、消費者や株主など、ステークホルダーから社会的に高い評価を受ける傾向があります。
そのステークホルダーには、企業で働く従業員も含まれています。
サステナビリティの観点においては、環境保護に留まらず、多様性や働きやすさの実現も注力すべき項目の一つです。
持続可能な取り組みを進めるなかで、職場環境が改善されれば、従業員からのエンゲージメントが高まることは疑いようがありません。
従業員のエンゲージメントの高まりは、生産性の向上や離職率の低下といったプラスの効果として表れるでしょう。
サステナビリティの取り組み事例
サステナビリティに関する概要は、おわかりいただけたでしょうか?
サステナビリティへの取り組みの範囲は広く、社会貢献活動や環境活動、製品開発まで多岐にわたります。
【サステナビリティへの取り組み例】
- ボランティアなどの社会貢献活動
- 植林などの環境活動
- 多様性を尊重した職場づくり
- 環境に負荷を与えない製品の開発・販売
- フェアトレード品や安全性の担保された製品の調達・販売
ここからは、実際にサステナビリティの実現に取り組む企業の事例をご紹介します。
なお、以下で紹介する内容は、JEMSの事例ではございませんので、ご留意ください。
事例①株式会社ファーストリテイリング
ユニクロやGUなど、日本を代表するアパレルブランドを展開するのが、株式会社ファーストリテイリングです。
ファーストリテイリングは、“服のチカラを、社会のチカラに”をサステナビリティ・ステートメントとして掲げ、社会の持続的な発展を目指しています。
サステナビリティへの取り組み事例として挙げられるのが、小中高校生を対象に実施した参加型学習プログラム“届けよう、服のチカラプロジェクト”です。
こちらのプロジェクトは、不要になった子供服を回収し、国連難民高等弁務官事務所を通じて、服を必要としている難民に寄贈する取り組みです。
そのほか、サプライチェーンで働く人々の人権尊重や多様性の推進、人材教育にも注力しています。
参照元:株式会社ファーストリテイリング
事例②日産自動車株式会社
日本を代表する自動車メーカーである日産自動車株式会社も、サステナビリティに取り組む企業の一つです。
日産自動車は、サステナビリティを事業の中核に据え、よりクリーンで安全、かつインクルーシブ(包括的)な世界を目指し、商品や技術の開発、サービスの提供に取り組んでいます。
具体的には、2050年までに事業活動を含む、車のライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルの実現を目指しています。
2022年度には、2000年度比で、新車からのCO2排出量を41.2%削減に成功しました。
カーボンニュートラル実現のマイルストーンとして、2030年早期より、主要市場に投入する新型車は、すべて電動車両となる予定です。
参照元:日産自動車株式会社
事例③楽天グループ株式会社
日本最大級のECモール“楽天市場”を中心に、さまざまなインターネット関連サービスを展開する楽天グループ株式会社も、サステナビリティ活動に取り組んでいます。
楽天グループは、サステナビリティ活動において注力すべき課題を“3つの重点分野”として定めています。
【楽天グループが定める3つの重点分野】
- 従業員と共に成長
- 持続可能なプラットフォームとサービスの提供
- グローバルな課題への取り組み
3つの重点分野を定めることで、楽天グループのビジョンや役割を明確にし、実施すべき取り組みを決定する際の焦点としているのです。
2018年には、12の認証に基づいてセレクトした、サステナブルな商品を取り扱う“EARTH MALL with Rakuten”をオープンしました。
参照元:楽天グループ株式会社
事例④日本コカ・コーラ株式会社
清涼飲料水でおなじみの日本コカ・コーラ株式会社も、サステナビリティへの取り組みを明らかにしている企業です。
日本コカ・コーラは2018年、“World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)”の実現をグローバル目標として掲げ、環境負荷の軽減に乗り出しました。
設計・開発・パートナーを3つの柱とし、容器由来の廃棄物削減と、日本国内におけるプラスチック資源の循環利用の促進に貢献しています。
なお、旗艦製品の100%リサイクルペットボトル導入を加速させ、2030年までには、すべてのペットボトルをサステナブル素材へ切り替えることを目指しています。
この目標が達せられれば、年間で約26,000トンの温室効果ガスの排出と、約29,000トンの新たな石油由来原料から作られるプラスチック量の削減が実現する見込みです。
参照元:日本コカ・コーラ株式会社
ICTを活用したサステナビリティへの取り組み事例
サステナビリティの実現のために、さまざまなICT(Information and Communication Technology)が用いられるケースがあります。
ICTとは、“情報通信技術”のことです。
私たちの生活に密接するICTが、どのようにサステナビリティに活かされているのか、その事例を見てみましょう。
その①トレーサビリティシステムを活用した事例
まず挙げられるのは、トレーサビリティシステムを活用した事例です。
トレーサビリティシステムとは、生産者から消費者、消費者から生産者と、双方向の流通の様子を追跡できる仕組みのことです。
一例を挙げるならば、有機野菜の生産過程を透明化する際に用いられています。
環境負荷の少ない有機野菜の、生産から出荷までの過程の情報をプラットフォームで管理し、消費者へ公開するのです。
ここでは、有機野菜の産地や土壌のほか、流通時の温度も記録されています。
生産から流通までの過程を消費者に公開することで、有機野菜の安全性を証明するのが狙いです。
また、情報を公開することで、有機野菜の付加価値が高まり、農家の収入向上も図れます。
その②サプライチェーンマネジメントを活用した事例
続いて紹介するのは、サプライチェーンマネジメントを活用した事例です。
サプライチェーンマネジメントとは、仕入先(供給)企業から顧客までの製品の流れを管理し、その業務プロセスの効率性を高め、無駄をなくす管理手法のことです。
製造業における、エネルギーのロスを削減するために活用されています。
工場内の機器の稼働状況や製品情報を管理し、生産過程を効率化することで、消費エネルギーの削減を図ります。
また、在庫管理を徹底し、必要な数だけを調達することで、余計な生産を防ぐのです。
環境に優しいだけでなく、コストの発生を抑えられるぶん、企業経営の改善にも役立ちます。
サステナビリティは社会全体を持続可能な状態に導くための考え
今回は、サステナビリティの概要と、導入事例を紹介しました。
サステナビリティは、環境や社会、経済に配慮した活動を行うことで、社会全体を持続可能な状態に導くための考え方です。
地球温暖化や海洋汚染、気候変動など、環境問題が深刻化しているなか、その重要性に世間からの注目が集まっています。
企業が自社の価値や売上の向上を図るうえでも、SDGsやサーキュラーエコノミーと同様、欠かせない要素と言えるでしょう。
JEMSでは、サーキュラーエコノミーの実現に向け資源循環の価値証明サービス「Circular Navi」の提供を2022年4月に開始しました。
すでにプラスチックの資源循環をはじめとした実証実験などにご活用いただいています。
その他にも、一般廃棄物を削減するための回収量の見える化などさまざまな取り組みを支援しています。
今後も約30年にわたる廃棄物管理の分野で培ったノウハウとパートナーシップをもとに再生材や再生材利用製品の価値を最大化することで企業の循環型ビジネスの構築を支援していきます。
サーキュラーエコノミーに主体的に取り組もうとお考えの皆様のパートナーであり続けることを目指しています。