複数の廃棄物管理DBを集約。管理業務の属人化から脱却し、コンプライアンス強化を実現
浜松ホトニクス株式会社 様
光関連の電子部品や電子機器を製造・販売し、世界の“光電子増倍管”市場で90%のシェアを誇る浜松ホトニクス株式会社様(以下、浜松ホトニクス)。
2021年から段階的にJEMSの「環境マネジメント業務支援サービス」の導入を進め、現在は全社で運用しています。
同サービスを導入した理由や導入前の課題、導入による効果などについて、浜松ホトニクス 固体事業部固体総務部 渡邉寛様、松下祐希様、製品管理統括部 赤堀伸二様、松岡徹様にお話を伺いました。
浜松ホトニクス株式会社
本社所在地:静岡県浜松市中区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル
事業内容:光関連の電子部品や電子機器を製造・販売
従業員数:3,884名(海外出向者・その他78名除く)(2022年9月30日時点)
ホームページ:https://www.hamamatsu.com/jp/ja/
1.浜松発、光を使いこなす世界的企業
「浜松ホトニクス」の環境への取り組み
──はじめに、貴社の事業内容について教えてください。
松岡様
当社は、「光を使いこなす技術を開発して社会に役立てる」会社として、1953年の創業から今日に至るまで、光センサや光学製品、光源、線源、レーザ、カメラなど、光にまつわる製品を開発・販売してきました。
製品は、医療やライフサイエンス、宇宙開発、産業、自動車など、さまざまな分野で使われています。
国内には、浜松の本社事務所のほか、光の基礎研究を行う中央研究所をはじめとする研究拠点が3カ所、製品の開発・製造を担う生産拠点が7カ所あり、海外ではアジアやアメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカにも拠点を展開しています。
浜松ホトニクス本社工場
──最先端技術を究める世界的企業として、環境への取り組みにも力を入れておられますよね。
赤堀様
はい。全社方針である「環境基本方針」を定め、「光技術で社会に貢献する」企業として、持続可能な社会の実現を目指しています。そして、取り組みを実行するうえで主軸となるのが、「環境マネジメントシステム」です。全社組織の環境委員会のもと、「省エネルギー部会」「廃棄物部会」「化学物質部会」「環境保全部会」「製品アセスメント部会」という5つの専門部会が、環境活動を推進する具体的な施策を進めています。
引用:浜松ホトニクスホームページより
2.浜松ホトニクスの
「環境マネジメント業務支援サービス」活用術
──現在、JEMSが提供している「環境マネジメント業務支援サービス」の活用方法についてお聞かせください。
松岡様:
当社では、全社的に「環境基本方針」の目標を達成するために、自社で構築した環境データベースを使い、環境パフォーマンスや化学物質管理、フロン管理などのデータを集約しています。
JEMSさんの「環境マネジメント業務支援サービス」は、このなかで「廃棄物管理システム」として活用しています。
クラウドサービスによるデータの一元化
全拠点、廃棄物の処理委託時に電子マニフェストの交付をJEMSさんのクラウドサービスで実施しています。全社標準の運用方法により、廃棄物に関する情報が一元的に集約・管理できています。また、蓄積したデータから排出量やリサイクル量などの指標の集計や評価、各種報告書の作成を行っています
さらに、産業廃棄物だけではなく、一般廃棄物や有価物の情報もクラウドサービスに入力して一元的な管理を行っています。
許可証・委託契約書のコンプライアンス強化
全拠点の委託先処理業者さんの許可証について、有効期限の管理や更新取得をJEMSさんにお任せしています。また、JEMSさんにてルート(運搬から最終処分までの処理パターン)と委託契約書との整合性を確認して不備があれば指摘いただけますので、指摘内容をもとに契約の見直しを行っています。
3.「環境マネジメント業務支援サービス」の導入で業務効率向上と属人化防止、コンプライアンス強化を実現!
──「環境マネジメント業務支援サービス」の導入による成果をお聞かせください。
廃棄物管理の業務効率化
松下様
まず、「環境マネジメント業務支援サービス」によって許可証・委託契約書・マニフェストの一元管理を行うことで、廃棄物管理の業務効率を飛躍的に向上できました。一般廃棄物や有価物といったJWNETの管理対象外の排出物も「環境マネジメント業務支援サービス」ならまとめて管理できるので、他のシステムとの併用に係る業務負荷もありません。
属人化の防止
松岡様
「環境マネジメント業務支援サービス」の導入に合わせて、以前は事業所ごとにバラバラだった廃棄物管理の運用を統一しました。「業務にシステムを合わせる」という従来の発想から脱却し、廃棄物管理に精通するJEMSさんのシステムに業務を合わせることで、属人化を防ぎ、誰でも管理ができるような環境を実現できました。
また、業務の標準化により、適法な廃棄物管理が誰でも簡単にできるようになり、コンプライアンスの強化にもつながったと考えています。
4. 以前は複数のデータベースの管理で運用コストがかかり、
かつ属人化により技術継承にも課題があった
──「環境マネジメント業務支援サービス」を導入する以前、貴社が抱えていた廃棄物管理の課題はどのようなものだったのでしょうか?
松岡様
以前は、社内サーバーに環境データベースを構築し、さらにそのなかに自社開発した廃棄物管理システムが存在しているという状況でした。
イントラネットのなかで構築していたため、そもそもグループ会社からアクセスができないという問題がありました。
また、日々の廃棄物管理に関してはいくつかの課題がありました。
複数のデータベースが存在することで運用コストがかかっていた
渡邉様
以前は契約書類の審査や許可証の保管、廃棄物管理などをそれぞれ異なるデータベースで行っていました。そのため、更新作業にも手間がかかって管理も煩雑になり、人的リソースがひっ迫する原因になっていたんです。
電子マニフェスト対象外の排出物の管理が難しかった
松岡様
弊社では、排出物の種類として、汚泥や廃酸、廃プラスチックといった産業廃棄物のほかに、一般廃棄物や有価物も発生します。しかし、一般廃棄物や有価物は電子マニフェストの対象外になるため、JWNETでは管理できず、業務が煩雑になる要因になっていました。
管理業務が属人化し、業務の引き継ぎや技術継承に課題があった
松下様
以前の管理方法では、使用するデータベースも多く、誰でも簡単にできるような仕組みではなかったため、事業所ごとに2名ほどの担当者が専任で業務にあたっていました。そのため、管理業務が属人化し、引継ぎも難しいという課題があったのです。
松岡様
また、以前の環境データベースは、レガシー技術で内製したものだったため、システム構成を熟知しているエンジニアでないとメンテナンスができず、エンジニアリングにおける技術継承という意味でも不安が大きかったです。
赤堀様
さらに、以前は事業所の担当者が使いやすいようにデータベースをカスタマイズしていたので、管理方法が事業所ごとに異なり、業務の標準化ができていませんでした。
5. ワーキンググループを立ち上げて導入を推進。
独自のマニュアルも整備して最適な業務の流れを確立
──課題解決に向けてサービス導入を検討する際、他社比較はされましたか?
松下様
展示会を訪れて3社のサービスで比較検討を進めました。
その結果、管理者の目線で画面上のUIがわかりやすく、もともと良い評判を聞いていたJEMSさんのサービスを選びました。営業の方の説明も丁寧で、とてもいい印象を受けたことを覚えています。
──契約いただいてから事業所で導入されるまでの経緯をお聞かせください。
松下様
まずは2021年3月に固体事業部の3事業所で導入して、実際の操作性や業務効率などを評価しました。
それをもとに全社導入に向けたワーキンググループを立ち上げて、2022年10月に全11事業所で正式導入しました
松岡様
先ほどお話したように、従来のシステムを「環境マネジメント業務支援サービス」に刷新するためには、廃棄物管理の業務そのものを見直す必要がありました。ワーキンググループにて、処理状況の確認報告書をどのように新システムに反映していくのか、紙のマニフェストをどのようにデータとして登録していくのかなど、各事業所の担当者ともディスカッションしながら運用方法をまとめ、独自のマニュアルに落とし込むことで、新たな業務の流れを確立しました。
6.契約内容と実際の排出物の動きが紐付き見える化
──改めて、JEMSの「環境マネジメント業務支援サービス」への評価をお願いします。
松下様
今、松岡が話したように、システムの変更に合わせて業務を変えるための各事業所との合意形成では、大変な労力を要しました。しかし、統一基準で各事業所が廃棄物管理業務を推進することによって自動的にデータがたまり、排出量やリサイクル量、最終処分量がわかるという、理想的な状況を実現できたことは大きな成果だと思います。また、会社としてどういう情報が欲しいのかを整理し、マニフェスト情報に計測したい独自指標を付加できた点がとても役立ちました。個別に処分業者に確認していた時とは雲泥の差ですね。
さらに、誰でも廃棄物管理ができるようになったことで、事業部を超えた人事異動もしやすくなりました。最終的には、全社の廃棄物管理を1人で行えるという状況も夢ではないと思います。
また、廃棄物の収集運搬・処分業者さんとの契約の内容と、現場で実際に発生する廃棄物の動きが紐づいて見える化された点も素晴らしいですね。
松岡様
最初に固体事業部の3事業所で導入をしてから全社展開に向けた検討のなかで、JEMSさんの「環境マネジメント業務支援サービス」と既存のデータベースの年間利用料を比較したところ、十分な業務改善効果が得られるという結論に至りました。
そのため、現場の声といった定性的な評価だけでなく、経営的な目線でコスト面でも評価できる、優れたサービスであると考えています。
──ありがとうございました。最後に、今後の御社の環境マネジメントに関する展望をお聞かせください。
松岡様
当社では、廃棄物の資源循環に向けて、リサイクル量や最終処分量の管理も行っています。2022年からJEMSさんが新たにリリースした「資源循環ノート(資源循環にまつわる総合情報サイト)」も役立てながら、さらなる環境パフォーマンスの向上を目指していきたいです。
赤堀様
JEMSさんの「環境マネジメント業務支援サービス」の導入は、廃棄物の適正管理や、サーキュラーエコノミーの推進において効果をもたらす好事例となりました。無事に全事業所で導入できましたので、今後は関連会社への展開も見据えて活用の定着を進めていきます。